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デンソーがSiCウエハーの生産効率を15倍に、新開発のゲート駆動ICで効率1割増し:人とくるまのテクノロジー展2025
デンソーは、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」において、8インチSiCウエハーの新たな工法と、SiCデバイスで構成するインバーターの効率を向上できる新開発のゲート駆動ICを紹介した。
デンソーは、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(2025年5月21〜23日、パシフィコ横浜)において、8インチSiC(シリコンカーバイド)ウエハーの新たな工法と、SiCデバイスで構成するインバーターの効率を向上できる新開発のゲート駆動ICを紹介した。
SiCウエハーの一般的な工法としては昇華法が知られているが、種結晶からの成長速度が遅いため生産効率に課題がある。デンソーが開発中の新たな工法は、高温ガスを用いることでより高速に結晶を成長させられる。新工法の結晶成長にかかる時間は、昇華法の15分の1と極めて短い。また、結晶成長時間を短縮することにより、SiCウエハーの製造によるCO2の排出量も90%削減できるという。
新開発のゲート駆動ICは、SiCデバイスをより高いゲート電圧で駆動することでインバーターの出力を従来比で10%向上できる。ただし、ゲート電圧を一気に上げて駆動する場合、インバーター側で何らかの異常が生じてしまうとSiCデバイスの焼損などにつながる可能性がある。そこで、ゲート電圧を2段階に分けて上げることで、もし異常があった場合には1段階目でゲート電圧を下げて安全性を確保できるようにした。
なお、これらの8インチSiCウエハーとSiCデバイス、ゲート駆動ICは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの支援を受けて開発を行っている。
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