「コイル」は受動素子ナンバーワンの不思議ちゃん:今岡通博の俺流!組み込み用語解説(13)(3/3 ページ)
今岡通博氏による、組み込み開発に新しく関わることになった読者に向けた組み込み用語解説の連載コラム。第13回は、受動素子ナンバーワンの不思議ちゃんである「コイル」を紹介する。
逆起電流への対策
逆起電流による悪影響を防ぐためには、以下のような対策が用いられます。
ダイオードの並列接続(フライホイールダイオード、還流ダイオード)
コイルと並列にダイオードを接続します。ダイオードは電流を一方向にしか流さない性質を持つため、電流が遮断された際に発生する逆起電流をダイオードを通してコイル自身に戻すことで、電圧の上昇を抑えます。
誘導負荷(モーター、リレーのコイルなど)を駆動するスイッチング素子(トランジスタ、MOSFETなど)と並列に接続することが一般的です。
サージアブソーバー(バリスタ、ツェナーダイオードなど)
過電圧が発生した際に、その電圧を吸収したり、クランプ(一定の電圧に制限)したりする素子を使用します。
バリスタは、ある電圧を超えると抵抗値が急激に下がり、過電流を流して電圧を抑制します。
ツェナーダイオードは、逆方向に特定の電圧以上になると電流が流れ出す性質を利用して、電圧を一定に保ちます。
RCスナバ回路
抵抗(R)とコンデンサー(C)を直列に接続し、スイッチや誘導負荷と並列に接続します。
電流遮断時に発生する急峻(きゅうしゅん)な電圧変化をコンデンサーが吸収し、抵抗がその放電電流を制限することで、ノイズの低減やスイッチング素子の保護に役立ちます。
チョッパー回路
チョッパー回路は先ほどの逆起電流を積極的に利用して高電圧を生成します。
図4はチョッパー回路の典型的な例です。
コイルとスイッチング素子であるトランジスタ、整流素子であるダイオードと、出力段には波形を落ち着けるためのコンデンサーと抵抗が並列に入っています。
トランジスタのINに電流を供給すると、トランジスタはオン状態になるのでVCCからの電流はコイルLを通って短絡します。この時点でコイルLにはパワーが蓄えられます。その後トランジスタをオフにした時点で高電圧が生成し、ダイオードを通って整流され、RCで波形整形された後に直流の高電圧がOUTから取り出せます。
おわりに
コンデンサーとコイルが電気回路の中に加わると回路の挙動は複素数が含まれる計算が必要になりますが、そのあたりの数式を使って説明した解説書や情報は多数あります。本連載では後日、数式を使わないでコイルとコンデンサーが織り成すイリュージョンを説明できればと考えています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ≫連載「今岡通博の俺流!組み込み用語解説」バックナンバー
- ≫連載「注目デバイスで組み込み開発をアップグレード」バックナンバー
オペアンプをコンパレーターとして使って見る
今岡通博氏による、組み込み開発に新しく関わることになった読者に向けた組み込み用語解説の連載コラム。第12回は、オペアンプをコンパレーターとして活用する事例を紹介する。組み込み技術者のためのコンデンサー活用術
今岡通博氏による、組み込み開発に新しく関わることになった読者に向けた組み込み用語解説の連載コラム。第11回は、組み込み技術者やデジタル技術者が知っておくとよいであろうコンデンサーの活用術を紹介する。マイコンで機械式ロータリーエンコーダーを扱う
今岡通博氏による、組み込み開発に新しく関わることになった読者に向けた組み込み用語解説の連載コラム。第10回は、第7〜9回で取り上げたチャタリング対策を基に、回転動作をマイコンに伝えるデバイスとして広く使われている機械式エンコーダーとマイコンをつなぐプログラムを紹介する。チャタリング対策を考慮しつつ機械系接点の開閉回数をマイコンに計数させる
今岡通博氏による、組み込み開発に新しく関わることになった読者に向けた組み込み用語解説の連載コラム。第9回は、第7〜8回で取り上げたチャタリング対策を考慮しつつ、機械系接点の開閉回数をマイコンに計数させるプログラムを紹介する。