パナソニックHD楠見CEOが語るグループ経営改革と1万人削減の真意:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
パナソニック ホールディングス グループCEOの楠見雄規氏は報道陣の合同取材に応じ、グループ経営改革の内容や思いについて説明した。
削減予定の1万人という数字は各事業会社で積み上げたもの
―― 人員削減について「人数が過剰だった」というような趣旨の発言もあったが、2025年2月に発表した以降のやりとりはどのようなものがあったのか。
楠見氏 人員削減に手を付けるのには忸怩(じくじ)たる思いがある。それでもやらざるを得ないから手を付けた。パナソニックグループが成長できていないのは、収益構造に課題があるからだ。それを何とかしない限りは将来の成長につなげることはできない。
1万人という数字もトップダウンで決めたわけではなく、それぞれの事業会社ごとに目標に合わせて精査をしてもらい、それを積み上げた形で決まった数字だ。そういう議論を2月以降行ってきた。例えば、パナソニックHDは事業会社からの配賦で運営しているため、事業会社の売り上げに対して予算が決まってくる。その見通しを持った上で最適な体制はどうするかを議論した。また、空質空調事業などであれば課題事業を解消できれば、目標達成に近づけられる。それをどうするかを考えて、数字を出してもらった。このように各事業からの試算を積み上げたのが1万人という数字だ。
―― 人員削減および構造改革費用について、パナソニック コネクトやパナソニック エナジーはほとんどなかった。この領域で人員削減がないのはなぜか。
楠見氏 パナソニック コネクトはもともと人員適正化が常態化していた。また、パナソニック エナジーはこれからさらに伸ばしていかなければならない領域で、人を増やすフェーズにあるためだ。
―― 4つの課題事業(産業デバイス事業、メカトロニクス事業、テレビ事業、キッチンアプライアンス事業)の位置付けや着地点は見えているのか。
楠見氏 それぞれの事業をどういう方針でどのように変えていくのかについてはほぼ決めている。実行するのはこれからで、相手先がある場合もあるので今話すことはできない。
―― 今回、課題事業とは別に「赤字事業の撲滅」という話もあった。課題事業の他にも赤字事業があるという認識か。
楠見氏 もともと「課題事業」として位置付けていたのは大きな事業単位で「ROIC(投下資本利益率)<事業別WACC(加重平均資本コスト)」となるものという位置付けで見て、4つの事業が対象となった。ただ、これらを構成する商品ごとや工場ごと、地域ごとなどで収支を見ており、より細かい単位で見たときに赤字になっている事業はある。既存の課題事業に含まれていなくても、高収益の事業体の中にも赤字事業はある。投資フェーズにあるものなどは対象としないが、そうでない場合はより高い収益性を目指す意味でも撲滅していくことが重要だという意味で話した。
テレビはライトアセットでブランド継続?
―― 2月の発表ではテレビ事業は撤退や終息をするのかと捉えていたが、パナソニックブランドのテレビは継続するのか。
楠見氏 テレビを含むスマートライフ領域は調整後営業利益10%以上を一つの基準としており、それに満たない事業については、方法を考えていくという姿勢は変わっていない。撤退や終息なども覚悟をしたうえで判断を下していくことは間違いないが、継続が必要な場合にはライトアセットで続けることを検討する。各地域でどういうパートナーと組むのかも含めてさまざまなオプションを考えている。
日本や台湾などは、テレビを含むパナソニックの家電製品が売れている。パナソニック専門店もあり、テレビがないとそういうお店は大きな打撃を受ける。また、他の家電との複合効果もある。そういう影響度も含めて、どの地域で続けるためにはどうすればよいかという形で検討を進めている。
―― そういう意味ではパナソニック専門店で取り扱っているような主力商材は何らかの形で残すということになるのか。
楠見氏 今までのやり方と異なるかもしれないが、パナソニック専門店の中心商材は残していく。
パナソニック専門店は、パナソニックの家電事業の強みとなっており、ユーザーからの生きたフィードバックや、新たな視点から提案がもらえる場だと考えている。そういう場を考えた場合、テレビは重要なツールであることは間違いない。ただ、そのツールとして単体製品で大きな赤字を生み出しているようでは話にならない。だからこそライトアセット化し、できることを決めていく。今まで通りのやり方を変えていくことが必要だ。
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