EVは安くなる? 急速充電が普及するには? 鴻海の関氏が語る:電動化(2/3 ページ)
鴻海が2025年4月に開いた事業説明会から、EVやSDV、バッテリー、サプライヤーに対する関氏のコメントを抜粋して紹介する。
ECU48個の「モデルC」
コネクティビティは、SDVとして圧倒的な利便性が提供できるまでの間、いろいろなものをつないで試していく必要がある。ADASもレベル2+やレベル3になれば非常に便利だが、現在はそれほどではなく価格も高い。こうした開発費のプレッシャーを、自動車メーカーが全て背負うのは不可能だ。
E/EアーキテクチャやSDVに悩む開発者は多いのではないか。従来のE/E(電気電子)アーキテクチャでは100〜250個のECUが搭載されているが、セミゾーナル、フルゾーナルに移行するといわれている。フルゾーナルになればかなりSDVが簡単になっていくが、セミゾーナルに移行する時点で苦労している企業が多い。
従来のE/Eアーキテクチャは商店街で、SDVはショッピングモールのようなものだと思う。ショッピングモールを建てるための説得に苦労している人が少なくないが、われわれは初めから“ショッピングモール”で始まった。2024年に発売した「モデルC」はECUが46個しかない。ICTがバックグラウンドにあるからこそ、こうしたスタートを切ることができた。
SDVは、ソフトウェア上は常に新しい状態にしていく。スマートフォンと同じで、スマートフォンについては鴻海の得意分野だ。どう構成されれば便利なのかを知っている。ソフトウェアは自動車メーカーにとっての命でもある。どう使い勝手を提供するかがブランドそのものになっていく。われわれはベースのところは用意するが、そこから上は自動車メーカーが作るところだ。
急速充電がもうかるには
EVはHEVだけでなくエンジン車よりも安くなると期待している。バッテリーの信頼性など課題はあるが、長寿命化の可能性も十分にある。EVがESGのためだけでなく、真っ向勝負で他のパワートレインと戦える状態を作っていきたい。
バッテリーのリユースは、現時点ではバッテリーの価格が下がっていることがネックになっている。2年前まで1kWh当たり200ドルほどだったのが120ドルまで下がってきて、中古より新品のバッテリーが安いという状況になりつつある。2026〜2027年にはバッテリー単価が90ドルを切って、80ドルで収束するのではないか。バッテリーの価格が下がり続ける中でのリユースの検討は難しいが、価格が収束すればリユースを回していけるだろう。
バッテリーのリサイクルに苦労するほどのEVは作られていない。バッテリーの寿命を延ばしていくのが重要だが、それ以上に重要なのは充電時間の短縮だ。EVが伸びないさまざまな要素のうち、一番センシティブなのが充電時間なのではないか。
急速充電が広がるために必要なのは、ビジネスとしてもうかることだ。急速充電器を設置した人がもうけられるかどうか。現在の急速充電は、400Vで充電したときに80%まで28分かかる。EVオーナーはできるだけ急速充電を使わないようにしたいと考えているので、急速充電器を設置してもうけられるわけがないし、設置が広がるわけがない。
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