受託加工業のための新たなブランド戦略 マルチアングルブランディングとは?:間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(27)(4/4 ページ)
デジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第27回は、受託加工業における新たなブランディングの考え方、「マルチアングルブランディング」について取り上げる。
まとめ:受託加工業の未来に向けたブランディング戦略
製品を保有するメーカーにおいては、製品ごとのブランディングを行うのが常識である。しかし、受託加工業になると、企業全体としての一貫性ばかりに意識が向きがちであり、個別の技術やサービスに応じたブランディングの発想が欠ける場合が多い。
だが、受託加工業において成功を収めるには、多角的かつ柔軟なブランディング戦略の構築が不可欠である。マルチアングルブランディングを導入し、顧客からの評価を戦略に反映させながら、ポジショニングを動的に調整することが競争優位性を生む鍵となる。
こうしたアプローチを積極的に採用すれば、より広範な顧客層へのリーチが可能となり、結果として企業としての強固なブランドの確立へとつながる。
補足:用語の定義
言葉の定義については、あえて後述する。ブランディングとマーケティングは相互に影響し合うため、これらを厳密に分けることには大きな意味を持たないからである。
ブランド(コアとなる価値)
「ブランド」とは、ユーザーが企業や技術、製品などに対して抱くイメージ、評価、感情などの総称である。企業側がどのように振る舞おうとも、最終的にはユーザーの主観によって自然に形成されるものである。
ブランディング(ブランド価値を高める取り組み)
「ブランディング」とは、企業がブランドのイメージを意図的に構築し、望ましい方向へと導くために行う戦略的な施策を指す。デザイン、メッセージ、顧客対応、製品提供などを通じて、「このように認識してほしい」というゴールに向かって印象を調整する。
マーケティング(ブランドの価値を広める取り組み)
「マーケティング」とは、企業の技術や製品、サービスの認知度を高め、ユーザーから選ばれるために行う活動全般のことである。ブランディングを含む広告、販売戦略、プロモーション、デジタル施策などを組み合わせ、「どのように価値を伝え、購入や利用へとつなげるか」を計画/実行する。
筆者紹介
小林正道
テクノポート株式会社 取締役
製造業のWebマーケティング支援を15年以上行っている。製造業への訪問実績は2000社を超える。幅広い加工知識と市場調査を基に、製造業の新規開拓営業の支援を行う。
マーケティングスキル×Webスキル(SEO中心)×製造業知識
この3つのスキルを組み合わせることで独自の専門領域を作り、限られた分野で卓越した力を発揮する。
日本工業大学技術経営学修士(MOT)2023年3月卒業。
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