ファクトリオートメーション用フィールドバスの歴史とは:産業用ネットワークのオープン化の歴史(4)(3/4 ページ)
本連載では、産業用ネットワークのオープン化の歴史を紹介します。今回は、ファクトリオートメーション用フィールドバスの歴史について解説します。
代表的なファクトリオートメーション用フィールドバス
どのようなファクトリオートメーション用フィールドバスが普及しているかについては、HMSネットワークスが毎年マーケットシェアを作成しています。例えば、図1のグラフは2015年にHMSネットワークスが発表したものです。
すでにこの時は産業用イーサネットの普及が始まっていました。それでも、産業用ネットワークの中ではまだフィールドバスが主力であり、その割合は66%とされています。
それぞれのフィールドバスの技術仕様などはWebサイトなどから確認できますが、本稿では少しだけ説明します。
PROFIBUS
PROFIBUSは1980年代にドイツでSiemens、Bosch、ABBなどが共同で開発したフィールドバスです。この仕様は1989年にまとまり、ドイツでPROFIBUS普及のための組織として「PNO(PROFIBUS Nutzerorganisation)」が発足しました。
当初開発されたPROFIBUS FMSはコントローラー間の通信に使われました。そのため、フィールドバスに使わない機能も含まれていたため、その後、1991年にPROFIBUS FMSの仕様を簡易化したPROFIBUS DPがリリースされました。
プロセスオートメーション用のフィールドバスとして1996年にPROFIBUS PAが開発され、PROFIBUSの種類は3種類になったのですが、マーケットで使用された9割以上はPROFIBUS DPになります。
Modbus
1979年に米国のModiconが同社のPLCと当時のミニコン(ミニコンピュータ)間の通信向けに作成し、その後、PLCと現場のインテリジェント機器間の通信に使われたフィールドバスです。
1980年代に米国のPLC市場はAllen Bradley(現在のRockwell Automation)とModiconの2つが大きなマーケットシェアを占めていました。当時、工場の制御を担当するPLCの上位として、DEC、DG、HPなどが製造するミニコンが多く使用されました。
ミニコンはIBMなどの汎用コンピュータ(メインフレーム)に対して、安くて小さいコンピュータが求められる市場を目指し、工場、研究所などに多く採用されました。このミニコンとModiconのPLC間の通信用として開発されたのが、Modbusです。
Modbusはデータバッファーを指定して、マスター/スレーブで読み書きを行うという単純なプロトコルで使いやすいため、ミニコンとPLC間だけでなく、PLCとインテリジェント機器間のデータ交換通信として広く使われました。
Modiconはその後、いくつかの会社に吸収され、マーケットからその名前を消してしまいましたが、Modbusの技術はその使いやすいコンセプトのため、現在までも生き続けています。
DeviceNet
米国のAllen Bradley(現在のRockwell Automation)で開発され、1994年に仕様が公開されました。1995年にはDeviceNetの普及団体として、ODVA(Open DeviceNet Vendor Association)が設立されました。
DeviceNetは汎用のCAN (Controller Area Network)をベースに使用したネットワークです。ODVAはその後アプリケーション層の仕様としてCIP(Common Industrial Protocol)を提唱しました。DeviceNetはCIPを実装した最初のネットワークです。
ControlNet
1997年にAllen Bradleyが開発しました。DeviceNetは現場に近い、いわゆるフィールドバスとして開発されたのに対して、ControlNetはコントローラー間、HMI間の通信を意識して作成されたと聞いています。ControlNetもDeviceNetと同じくCIPをサポートします。
CC-Link
1996年に三菱電機によって開発されたフィールドネットワークです。日本初のオープンネットワーク普及推進団体として設立されたCC-Link協会(CLPA:CC-Link Partner Association)により2000年11月に仕様が公開されました。CC-Linkは高速でエンジニアリングしやすいコンパクトな通信を目指したと思われます。日本で発表されたフィールドバスですが、全世界で普及活動をしています。
CAN bus
もともと車載用のネットワークとして1983年にドイツのBoschによって開発が開始され、1986年にリリースされました。
実は1980年当時、すでに多くの自動車メーカーは自動車内のECU(Electric Control Unit)間でデータ交換を行うための通信技術を独自で持っていました。CAN busはこれらの通信の標準化を目的に開発され、自動車業界でデファクトに近い状態まで使用されました。
CAN busのチップは自動車内だけでなく、工場でも使うことが可能ということで、産業用途でも広く使われ、フィールドバスの1つとなりました。DeviceNetは、CANプロトコルをベースに構築されたフィールドバスとなります。
INTERBUS
1990年代のヨーロッパの産業用機器の展示会で、フィールドバスとして大きなシェアを占めていたのは、INTERBUSとPROFIBUSです。
INTERBUSは1987年にドイツのPHOENIX CONTACT(フエニックス・コンタクト)が提唱したフィールドバスです。1つのフレーム内に複数機器のデータを割り当てて効率的に通信する、トータルフレームプロトコルという効率的な通信方式と断線検知の診断が優れていました。自動車製造ラインや物流システムなど多く使われたと聞いています。
ただし、INTERBUSの普及団体だったInterbus Clubは2000年代にプロフィバス協会と合併しました。フィールドバスの技術がRS-485ベースからイーサネットベースに移行されたことがあり、INTERBUSは徐々にマーケットから姿を消しました。
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