もっと自由なCNCへ〜第3期後編 PCベースCNCの登場:CNC発展の歴史からひもとく工作機械の制御技術(6)(3/4 ページ)
本連載では、工作機械史上最大の発明といわれるCNCの歴史をひもとくことで、今後のCNCと工作機械の発展の方向性を考察する。今回は最終回として、PCベースCNCが誕生してCNCの自由化が進んでいる現代について紹介する。
PCベースCNCの実用化〜オークマ「OSP-P」の登場
先に紹介したようにパソコンNCは、大きくは市場に広がらなかった。しかし、その後、本格的にPCベースCNCを開発して実用化する工作機械メーカーが登場した。それがオークマである。
オークマは1963年に自社製のNC装置を搭載した工作機械を開発し、それ以降、現在においても自社製のCNCを開発し続けている。CNCに限らず、モータ、サーボドライブアンプ、エンコーダーといった工作機械の主要な要素部品を全て自社開発しており、世界的に見ても他に例のない工作機械メーカーだ。
このオークマが2000年に開発したPCベース世代のCNCが「OSP-P100」だ(図6)。オークマはそれまでの工作機械の開発において重点が置かれていた「メカ」「電気」に加えて、これからは「ソフトウェア」が重要であると考えていた。これを工作機械に組み込むことを容易とするために、その基盤となるPCベースCNCを開発した。
オークマのPCベースCNCの構成を図7に示す。中心となるのは図中に「高性能NCコンピュータ」と記載されているPCハードウェアだ。このPCハードウェアの上に、WindowsとリアルタイムOSの2つをデュアルOSとして搭載させている。
Windowsの方では、操作画面ソフトウェアなどのWindowsアプリケーションが動作する。リアルタイムOSの方では、機械を動かすための制御プログラムが動作する。もちろんどちらのOS上においても、オークマ独自のソフトウェアを組み込むことが可能となっている。

図7 オークマのPCベースCNC「OSP-P」の構成[クリックで外部サイトへリンク]出所:「IEC61131-3準拠のソフトPLCを採用したオープンCNC」(発表:深谷安司/オークマ、PLCopen Japanセミナー2012、2012年11月)
このPCベースCNCの開発をきっかけに、オークマは他社に先駆けて工作機械上でさまざまな知能化機能を実現する(図8)。
2001年に開発されたサーモフレンドリーコンセプトは、工作機械の熱変形は避けられないものだと受け入れ、機械内部での熱の伝わり方が均等かつ、機械が予測可能な方向に伸縮するように構造を設計することで、高精度な熱変位制御を実現した機能だ。
2004年にはアンチクラッシュシステムを開発した。これは実際の機械内部と同じ3次元モデルを仮想機械としてCNC上に備えておくことで、加工プログラムやオペレーターの手動操作での動作に対して機内干渉をチェックし、衝突が発生する直前に軸移動を停止する機能となっている。
2008年には最適な加工条件を自動で適用する加工ナビという機能を開発した。これは機械内部に埋め込んだセンサーによりびびり振動を計測し、これを抑制するために主軸回転速度を自動的に変更する自動制御機能だ。
オークマが開発したこれらの知能化機能をきっかけに、多くの工作機械メーカーがその後、工作機械をより便利に使うためのソフトウェア開発を行い、これに続いたのである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.