AIが話し合って調達を決める? 自律稼働SCMを目指すパナソニック コネクト:サプライチェーン改革(2/2 ページ)
パナソニック コネクトは、R&D部門の取り組みを紹介するとともに、現在力を入れているSCM(サプライチェーンマネジメント)ソリューションの現状と今後の強化方針について説明した。
「オートノマスSCM」を目指すブルーヨンダー
パナソニック コネクトでは2021年にブルーヨンダーを買収し2023〜2025年にかけて2億米ドルの投資をかけて次世代プラットフォームの開発を中心に、研究開発を進めている。
目指す姿は「オートノマスSCM」だ。榊原氏は「オートノマスSCMはサプライチェーンマネジメントが自律的に稼働するというものだ。そのためにはブルーヨンダーで提供するクラウド基盤とともに、そのプラットフォームにどういうデータを入れていくかが重要になる。現場の動きをセンシングし、それを解釈してデータ化する技術で、ここはパナソニック コネクトが得意な領域だ。これらを組み合わせることで、自律的にフィジカルの状況に合わせた変更が行える姿を目指している」と語る。
ただ、オートノマスSCMをいきなり全体像として実現することは難しい。そこでブルーヨンダーでは「Joint ソリューション」として、実際に使われるユースケースを調査し整理を行った。そこで、「店舗(Intelligent Store)」「倉庫(Digital Warehouse)」「物流(Connected Logistics)」をあらためて重点領域として定め、ユースケースに応じたソリューションを一つ一つ形にしていく取り組みを進めている。
榊原氏は「北米の顧客20社を調査し、サーベイミーティングなどを重ねて今は60以上のユースケースの用意を進めている。一部のソリューションは既に導入を開始している。例えば、倉庫向けのヤードマネジメントは、倉庫の入出庫および倉庫在庫の管理などを倉庫内の場所にひも付けて管理できるが、北米で3PLやリテールで導入されている」と語っている。
AIを組み込んだインテリジェントなロボットが実行系を担う
日本のサプライチェーンマネジメントは部署間や企業間の壁や、デジタル化の遅れ、全体最適を考える意思決定者がいないという点から、ブルーヨンダーが展開するような部門をまたぐソリューションの導入がなかなか進まないという課題がある。榊原氏は「日本では苦戦しているというのは事実だが、生みの苦しみだと捉えている。計画系や実行系の一部から入り、カバー範囲を増やしていく。日本ではトップと現場の両方のアプローチが必要で、小さく入って徐々に伸ばすやり方が必要だ」と述べている。
今後に向けてはAIの活用を強化する。「チャットエージェントも開発しており、これらをSCMソフトウェアに組み込むことにも取り組んでいる。単なるユーザーインタフェースではなく、内部のデータフローまで踏み込んで最適なデータの呼び出しが行えるようにする。これらが進めば、サプライヤーなど他社のAIエージェント同士がやりとりをし、最適な調達を行うようなことも可能となる」と榊原氏は今後の方向性について述べている。
さらにその先を見据えた場合、これらのAIエージェントの能力をフィジカルの世界に広げ、ロボットが自律的に作業するような世界も想定している。「Embodied AIなどが注目されているが、ロボットにスモールランゲージモデルやビジョンランゲージモデルを組み込む時代になってくる。AIエージェントを組み込んだロボットが自動で作業をする世界が生まれる。現在はラピュタロボティクスとのパートナーシップなども行っているが、その先でAIを組み込んだインテリジェントなロボットなども計画している。ただ、実際に形にするまでには2〜3年かかると見ている」と榊原氏は語っている。
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