ダウ・ケミカル日本は2025年1月21日、EV(電気自動車)の駆動用バッテリーや電子部品向けの製品説明会を開いた。
EVの駆動用バッテリー向けには、耐火コーティング材や冷却液に加えて、セルtoパックやセルtoシャシーに対応する放熱材や構造接着剤を提案する。電子部品向けにはカーボンナノチューブ(CNT)製の放熱シートを展開。「オートモーティブワールド2025」(2025年1月22〜24日、東京ビッグサイト)でも展示する。
耐火コーティング
EVの安全基準であるUN GTR20では、駆動用バッテリーの熱暴走を検知し乗員に避難するよう警告してから5分以上火災や爆発、発煙のないことを求めている。
自動車メーカーはこれに対応しているが、2026年には規制が強化され、熱暴走から危険な状態に至るまで確保すべき時間が5分間から2時間に長くなる。電池材料やモジュールの構造での工夫、バッテリーマネジメントシステムでの予防などバッテリーメーカーとの協力した“合わせ技”での対策が不可欠だという。
さらに、熱暴走発生後の保護として、ダウ・ケミカル日本は耐火コーティングを提案する。スチールやアルミニウム、カチオン電着塗装板に対する接着性を持ち、封止材とバッテリーの外装の間に塗布する製品で、発火した際に炎が室内側に広がるのを食い止め、隣接するセルの発火につながる温度上昇も抑制する。コーティング層が炎によってセラミック化した後も絶縁性能は維持する。
耐火性能については、1200℃の炎に15秒間さらし、粉じんを想定したサンドブラストに当てるサイクルを繰り返すULのトーチ/グリッド試験の他、さらに高温下で行う耐火性や耐ホットパーティクル性のロケット試験によって、火花が貫通しないことなどを確認済みだ。
また、EVの量産ラインを想定し、塗装設備メーカーと協力してコーティングの幅や厚み、塗布のサイクルタイムなども検証しており、ロボットを使った大規模な塗布に対応していく。
液浸冷却液
EVは、超急速充電への対応と、バッテリーの安全性や寿命を保つための冷却が課題の1つだ。空冷や水冷式コールドプレートでは十分な冷却性能が得られない用途に向けて、バッテリーを液体に浸して直接冷却する液浸冷却液の提案にも力を入れている。ダウ・ケミカルとしてはEVバスでの採用実績がある。
ダウ・ケミカルがシリコン系の冷却液を使用した液浸冷却のバッテリーでくぎ刺し試験を実施したところ、隣接するくぎを刺していないセルには熱が伝わらず、くぎを刺したセルからの発煙にとどまった。最高温度はくぎ刺しから約4.48分後の252.6℃で、温度はその後低下した。超急速充電に対応した冷却だけでなく、熱暴走の抑制にも効果があるとしている。
EVの駆動用バッテリーの他、データセンターなど向けでも需要を見込む。EVバスはスペースや車両が重くなることに余裕があったが、乗用車タイプのEVで液浸冷却を実現するには軽量化や冷却システムの小型化が課題になる。
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