紅麹関連製品摂取後に生じた腎障害に関する実態調査の詳細結果を公表:医療技術ニュース
大阪大学は、日本腎臓学会の会員医師を対象とした、紅麹関連製品摂取後に生じた腎障害の実態に関する調査結果を発表した。
大阪大学は2024年12月27日、紅麹関連製品摂取後に生じた腎障害の実態に関するアンケート調査の結果を発表した。調査は、日本腎臓学会会員の医師を対象に、同年3月27日〜4月30日に実施した。
初回調査では、紅麹関連製品摂取後に腎障害が生じたと判断した患者の検査所見などを収集し、4月と5月に中間報告をした。その後、対象患者の経過を調べるフォローアップ調査を経て、6月に本報告をしている。
初回調査では、対象となった患者192人のうち95.3%に、eGFR(推算糸球体ろ過量)<60ml/min/1.73m2となる腎機能障害が認められた。血液および尿検査の結果、尿糖や低リン血症、低尿酸血症、低カリウム血症、代謝性アシドーシスといった、ファンコニー症候群の特徴的な検査所見を呈する患者が多かった。
また、102人に対する腎生検検査では、尿細管が障害された所見として尿細管間質性腎炎(50.0%)や尿細管壊死(32.0%)が認められた。免疫組織化学染色では、尿細管細胞で糖を再吸収する分子の発現が低下し、尿糖が出現することが分かった。
フォローアップ調査は、初回調査対象患者のうち114人を対象とした。ファンコニー症候群に関連する尿細管機能の検査異常値は多くの患者で改善していたが、患者の87.0%は腎機能障害が持続していた。
さらに、初診時の腎機能によって患者を3グループに分け、腎機能の回復過程をモデル化した。その結果、初診時の腎機能が悪い人ほど回復が不十分であり、尿細管間質性腎炎で一般的に用いられるステロイド療法が有効であると断言できないことが明らかとなった。
今回の研究により、紅麹関連製品摂取後に生じた腎機能障害が、摂取中止後も残存することが明らかとなり、長期的な経過調査が必要であることが示された。
2024年3月22日、特定の紅麹関連製品を2023年末から2024年初めにかけて摂取した人に腎障害が発生したとの報道があった。同調査はこの報道を受けて実施されたものだ。
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