東洋信号通信社が「AIS」を集めてWeb配信する理由:船も「CASE」(1/3 ページ)
現代の船舶が航行する際に必須とされる「AIS」情報を提供する日本の有力企業の一つに東洋信号通信社がある。1932年7月設立の同社は、なぜAIS情報を集めてWeb配信するようになったのだろうか。
昨今のニュース、特にロシア−ウクライナ紛争や南シナ海/東シナ海関連の報道で船舶の関連するニュースが増えている。このようなとき、船舶がどのような航路を取っていたのかを示す画像で「Marine Traffic」などのWeb画面が紹介されることが多い。
Marine Trafficは、船舶が発信している「AIS情報」をWebページで利活用するインターネットサービスだ。そのAISデータを提供する日本の有力企業の一つに東洋信号通信社がある。
創業当時の仕事は“船が来たぞー”と言って回ること
東洋信号通信社(略称はTST。以下、記事ではTSTと呼ぶ)の設立は同社沿革によると1932年7月1日までさかのぼる。ちなみに、設立の6日後には日中戦争の契機となった盧溝橋事件が発生している。「創業時の当社の仕事は、港に入ってくる船を見張り、入港するタイミングで“船が来たぞー”と言って回ることでした。」(東洋信号通信社 ポート・データ・インフォメーショングループ チーフの坂野太陽氏)。
同社の会社概要には営業品目として「船舶動静に関する情報提供」とある。AISデータのWebによる配信もその営業品目に当てはまるといえる。
船舶の動静情報、特に入港時間と出港時間は港湾関連企業にとって業務に欠かせない。港湾関連企業には接岸と離岸を支援するタグボートや船員を沖泊した船と陸に送り迎えする通船、燃料や水の補給、貨物の上げ下ろしをする港湾作業員(ガントリークレーンやトレーラーなどコンテナ関連作業員も同様)、そして、税関入管関連業務担当官などなど、1隻1隻ごとに多大な人員と物資が行き来することになる。その手配と準備にきめ細かく正確な船舶動静は必要不可欠な情報といえる。
「商船の仕事は、港に入ればおしまいというわけではありません。着岸後には荷物の積み降ろしや行政関係の手続きなどの仕事が待っています。さらに、そもそも港に入るためには、水先人の他にも岸壁で係留ロープを受け取ってくれる人などの支援も必要です。そういう仕事をする方々が港には何十、何百といるわけです」(坂野氏)
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