ERP導入によって製造業はどう変われるのか?:製造業ERP導入の道しるべ(1)(2/3 ページ)
国内製造業にはERP導入を検討している企業も多いが、実際の導入効果のイメージがつかないというケースも少なくない。本連載ではSAPのERPを例にとって、ERPの導入効果や業務効率化のアプローチなどを紹介する。
製造業におけるERP導入の狙い
こうした課題を抱えている製造業の企業は、以下のような狙いで既存/現状のシステムをERPにリプレースしたいと考えている。
(1)見える化/データドリブン経営の実現
現在、多くの企業に求められているのが、情報の見える化やデータドリブン経営の実現だ。そのためにERPを導入し、一元化された精度の高い情報を見ながら、タイムリーに経営判断が行える環境を構築したい。国内外の複数拠点の情報も、まとめてリアルタイムに見ることで、リソースの集中と選択を判断したいと考えている。
最近では製造業でも、ポートフォリオを重視した市場の見極めが求められるようになってきた。例えば同じ製品でも、EV(電気自動車)の市場に投入するのとガソリン車の市場に投入するのとでは、利益率や需要が大きく異なることがある。ERPの導入で、こうした見極めも高い精度で判断したい。
(2)業務の効率化
業務自体も長年にわたって肥大化、煩雑化しており、新しくERPを導入するタイミングで、業務の効率化を進めていく企業も多い。
今回は後ほど、「業務の標準化」「業務のスリム化/止める化」「業務の自動化」のアプローチを順にご紹介する。
(3)システムプラットフォームを改革したい
昨今はソリューションの移り変わりも早く、必要なソリューションを必要なタイミングで使えるクラウド型のERPの導入が求められている。
その際には、新たにガバナンスやセキュリティ、法的要件などが担保できる仕組みも組み入れたいと考えている。
ERPによる業務効率化のアプローチ
単純にERPを導入するだけで、課題が解決されるわけではない。以下のような適切なアプローチや施策を講じることで、ERPを最大限に有効活用するメリットが享受できる。
(1)企業内の類似業務を標準化する
情報を一元化し、類似した業務を同じプロセスで標準化できれば、社内業務で用いる言語が統一され、コミュニケーションが発生する。それによって人の流動性も確保でき、社内ノウハウの横展開も可能になるだろう。
社内の仕組みやプロセスが共通化していれば、事業部ごとに扱う商品が異なっていても業務の流れは同じなので、足りていないリソースや人材を互いに融通し合える。また、統一された仕組みやルールでモノを作っていれば、「この設定でこういう作り方をすれば一番安い原価で作れる」など、事業部間での知見共有も可能になる。
業務標準化に関して最近注目を集めているキーワードが、「Fit to Standard」のアプローチだ。従来、基幹業務システムを利用する際には部門/拠点が自身の業務要件に合わせてカスタマイズしてきた。それが、システムの肥大化を招いた要因でもある。
「Fit to Standard」は、現行業務(AS-IS)をベースとした新業務設計ではなく、ERPに事前に組み込まれたシンプルな業務プロセスに各部門/拠点が業務を合わせていくアプローチである。結果として部門/拠点間の利害調整を軽減しつつ、組織横断の標準化プロセスが実現できる。
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