自動車産業が2035年に目指す姿や危機感をまとめたビジョンを発表:脱炭素(2/4 ページ)
日本自動車工業会は自動車産業からモビリティ産業への変革に向けて目指す姿をまとめた「自工会ビジョン2035」を発表した。
ただ、2050年までのカーボンニュートラル達成にはより一層のCO2排出削減が求められる。これに向けて、日本ではサプライチェーン全体での排出量の算定が、欧州ではライフサイクルアセスメント(LCA)観点での規制の導入などが検討されており、取り組みが強化されていく。
これに向けて、自工会では多様な技術の選択肢で対応する「マルチパスウェイ」を以前から訴えてきた。複数のパワートレインを提供するだけでなく、エネルギーを作る/運ぶ/使うの全ての段階でCO2排出削減に取り組むことや、国や地域のエネルギーインフラに合わせていくことが重要だというメッセージが込められている。
限られた資源で最大限のCO2排出削減に取り組もうという意図もある。例えば、電池の製造に不可欠な重要鉱物は、新たな鉱山の稼働に時間がかかる。そのため今後10〜20年は電池用鉱物が全世界で30〜50%不足するというIEA予測がある。電池の搭載量の多いEVだけにシフトするのではなく、さまざまな電動車やカーボンニュートラル燃料に選択肢を分散させることが資源不足への対策にもなる。
2022年9月、自工会は2050年のカーボンニュートラル達成に向けた3つのシナリオを分析した。世界の平均気温上昇を1.5℃に抑えるというIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の目標を達成するのは、EV化を急速に進めるシナリオだけではないことが分かった。HEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)、カーボンニュートラル燃料を有効活用するシナリオでも目標と整合できる可能性があるという。
「自動車からモビリティへの変革は、自動車そのものではなく社会生活を中心に据えて、より多くの業界や行政と連携してモビリティが価値創造や課題解決をけん引したい」(自工会の松永氏)
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