2025年は“芋づる式”品質不正に注意、「人を介さない」仕組みの道筋作りがカギ:MONOist 2025年展望(2/3 ページ)
2024年も長期にわたる品質不正の露見が続き、「日本品質」への信頼が揺らいでいる。特に最近は同様の品質問題が立て続けに見つかる“芋づる式品質不正”の露見が多く発生しており、2025年も品質不正の露見は続くことは明らかだ。製造業は、それを前提にどのような順番で“あるべき姿”に向け対策を進めるかが重要だ。
不正が業務に深く定着し、注意喚起の意識外に
これらの国土交通省など当局の指導があってようやく、“芋づる式”に品質不正が発覚する現状を見ると、2つの点が明らかになってくる。
1つ目は、単一企業ではなく業界を横断して不正が定着しているということだ。「赤信号みんなで渡れば怖くない」というわけではないだろうが、競争の中で1社が不正に手を染めれば、勝つために対抗して同様の手を使うことになり、それが慣習になってしまっている。
2つ目が、品質不正が、それぞれの業務に深く定着し、当事者が疑問を感じることがない状況になっているということだ。これだけ品質不正の話題が注目を集めているにもかかわらず、国土交通省などの指導があって初めて気付くという状況がそれを示している。例えば、舶用エンジンにおける川崎重工業の事例では、IHIでの発覚時の国土交通省の注意喚起では気付けず、カナデビア発覚時の国土交通省からの2度目の調査要請によって初めて気付くことができた。そういう点からすると、業務に深く定着しすぎて、内部調査だけでは表に出てこない状況になっているといえる。
これらの業務や商慣習の中に埋もれた品質不正が1企業だけでなく、業界を構成する企業横断で散在する状況を見ると、日本の製造業において、品質不正がないクリーンな状況になるのはまだ先の話だといえる。当面は、これらの業務内にこびりついた“意識外の品質不正”をあぶりだし、是正していくことが必要となる。
適切な業務プロセスの構築が過度のプレッシャー回避へ
これらの対策としては、基本となるが、個々の品質検査の仕組みとしての対策、品質に関する教育など人的な対策、仕事の進め方などの組織としての対策などが必要となる。特に、品質不正が生まれる要因として「現場への過度なプレッシャー」があるというのは多くの外部機関が調査報告書で指摘しており、適切な業務の進め方を構築することが品質不正を防ぐ大きなポイントとなる。
長期にわたる品質不正を行っていたパナソニック インダストリーでは、外部調査委員会から不正につながった以下の9つの問題点が指摘されている。
- 品質保証の本質についての理解不足
- 品質保証に関する教育不足
- 幹部層の利益最優先の姿勢
- 正しい仕事をするための組織作りの問題
- 本社部門、事業部門、工場部門それぞれにおける品質部門の脆弱性
- 品質コンプライアンス体制の機能不全
- 声をあげることのできない組織風土
- 顧客と正しく議論できない向き合い方
- 経営陣の品質への認識不足
これらに対し、再発防止に向けた提言として、以下の5つの方策を求められている。
- 品質保証の本質についての理解不足および教育不足に関する方策
- 正しい仕事をするための組織作りに関する方策
- 品質部門の強化に関する方策
- ビジネスユニットの独立性を前提とした品質コンプライアンス体制の再構築
- 経営陣のコミットメントなど
これらの方策を推進する中で、あらためてそれぞれの業務プロセスを「品質保証」という切り口で見直すことで、“意識外の品質不正”を捉えなおすことができるかもしれない。また、日本の製造業はモノづくりを隠す傾向にあるが、あえてモノづくりプロセスを外部の目にさらすことで、外からの気付きを得ることなどもできるだろう。
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