AIとデジタルツインで半導体製造工程を最適化、データはスレッドでつなぐ:FAニュース
Siemensの日本法人シーメンスは東京都内で半導体業界向け戦略の記者説明会を開催し、半導体製造工場向けのAIやデジタルツイン活用の方向性を紹介した。
半導体製造の世界にもAI(人工知能)などの新しい技術が活用されている。Siemensの日本法人であるシーメンスは2024年11月28日、東京都内で半導体業界向け戦略の記者説明会を開催。同社 代表取締役社長 兼 CEOの堀田邦彦氏は「半導体の設計において、AIがなくてはならないものになっている。微細化や3次元の領域は人手では設計できない」と語った。
2024年にシーメンスは産業用シミュレーションソフトウェア大手のAltair Engineering(アルテアエンジニアリング)の買収を発表した。「理由の1つとして、アルテアはかなりAIに投資している。シーメンスのAI領域を急拡大するという意図が込められている」と堀田氏は話した。
産業界におけるAIの活用領域としては、堀田氏はプロセスの最適化や予知保全、品質予測などを挙げる。「AIに語り掛けるとどのように解析を進めたらいいかや、どんなオプションを使えば最適化できるかを教えてくれる」(堀田氏)。
シーメンス自身もシミュレーションソフトを手掛けているが、アルテアの買収によって幅広い分野のシミュレーションが可能になる。「シーメンスでは熱解析や衝突解析、電磁界解析などいくつかできない分野があった。今後はアルテアと補完しながら、あらゆる分野のシミュレーションを提供できるようになる」(堀田氏)。
今後の需要増大や経済安全保障などの観点から、日本をはじめ世界各地で半導体製造工場の建設が相次いでいる。2022年から2026年にかけて操業を始める半導体製造工場は約100カ所に上るという。また、半導体の開発サイクルを短縮するためにも、シミュレーションなどのデジタル技術の重要性は増している。
「なぜデジタルツインが必要か。実世界は遅い。工場を建てて、動かさないと検証できない。ところが、デジタル空間ならあっという間に検証できる。モノづくりの加速化という点で、これが一番重要となる。デジタル空間を実現するためにはITとOTの両方のテクノロジーが必要であり、ITとOTをつながるデータをどのように管理、蓄積していくかが大切だ。ITがいくら成長しても結局頭脳であり、データをしっかりとカテゴライズして、正規化し、ITが判断できるようにしなければならない」(堀田氏)
シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア ポートフォリオ開発本部 ディレクターの冨田直人氏は半導体の業界の現状を「いろいろなシステムがあり、サイロ化されている。人間を介してデータの伝達をしている。半導体製造の前工程はクリーンルームの中で自動化が進んでいるが、それ以外の部分はまだ人海戦術で賄っており喫緊の問題だ。そこで、デジタルの糸でそれらをつなぐ“デジタルスレッド”が重要になってくる。信頼性のあるトレーサビリティーが得られる」と述べた。
実際に半導体製造装置メーカーの導入事例では、デジタルスレッドを活用することで開発期間や調整時間の短縮などに結び付いたという。「半導体製造装置の設計や機械の制御、さらにオペレーターのトレーニングまで、同じデータベースで一気通貫に進めることで、さまざまなメリットがある」(シーメンス デジタルインダストリーズ 広域営業統括部 統括部長の加藤清志氏)。
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