検索
連載

いまさら聞けないCC-Link IE TSN入門(前編)産業用ネットワーク技術解説(1/3 ページ)

本連載では「CC-Link IE TSN」に代表される「CC-Linkファミリー」ネットワーク技術の特長と、それによって実現できるモノづくりの未来について、前後編の2回にわたって分かりやすく説明します。前編では、CC-Linkファミリーのこれまでの歩みや、CC-Link IE TSNにおいて採用したTSN技術について紹介します。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 産業用オープンネットワークは、近年急速に対応が求められているスマートファクトリーの構築や製造業DXの適用において、その基盤となる重要な技術です。

 本連載では入門編として、「CC-Link IE TSN」に代表される「CC-Linkファミリー」ネットワーク技術の特長と、それによって実現できるモノづくりの未来について、前後編の2回にわたって分かりやすく説明し、その重要性を解説します。

 前編では、CC-Linkファミリーのこれまでの歩みや、CC-Link IE TSNが世界で初めて産業用ネットワークに採用したTSN技術について説明します。

「CC-Link」から「CC-Link IE TSN」誕生までの背景

 2000年にCC-Linkが日本/アジア発で初めての産業用オープンネットワークとして誕生し、2025年で25周年になります。1990年代の工場自動化、生産ラインの複雑化に伴い、さまざまな機器をつなぐことができるオープンな産業用ネットワークへの需要が高まり、それらを受けて誕生しました。

 1996年の誕生以来マルチベンダー化が進められており、2000年にCC-Link協会(CLPA)の発足に合わせオープン化されました。現在、CLPAの拠点は日本を含め世界11カ国・地域に広がり、CLPAパートナー会員は4400社を超え、CC-Linkファミリーに接続可能な認定製品は3100製品以上となっています(2024年12月時点)。

 シリアルベースのネットワークとして、フィールドレベルで制御と情報を同時に扱えるCC-Linkが誕生したのち、2008年には「CC-Link IE」として、1ギガビットEthernetベースの「CC-Linkファミリー」が誕生し、フィールドレベルからコントローラーレベルまで適用領域を拡大しました。

図1 CC-Linkファミリーネットワークのロードマップ
図1 CC-Linkファミリーネットワークのロードマップ[クリックで拡大]出所:CC-Link協会

 2010年代に入りドイツが国家戦略として推進した「インダストリー4.0」や経済産業省が打ち出した「Connected Industries」など、人、モノ、技術、組織などあらゆるものがつながることによる新たな価値創出、いわゆるスマートファクトリーへの要求がグローバルレベルで加速し、現在に至っています。

 自律的で最適なモノづくりを目指すスマートファクトリーにおいては、工場内のさまざまな工程や装置および機器をネットワークでつなぎ、生産現場のデータをリアルタイムに収集/活用することで、生産性や品質を高める必要があります。

 しかし、その中で大きな障壁となっているのが、バラバラに構築されたネットワークをシームレスにつなぐことです。多くの工場では複数のネットワークが使用されており、より簡単に製造現場のデータを収集し、かつITシステムへのシームレスな伝送を実現するために、ネットワークの統合が求められています。

 これらの要望に応えるため、2018年にCC-Link IEの次世代を担うネットワーク技術として、世界に先駆けてTSN(Time-Sensitive Networking)技術を採用した「CC-Link IE TSN」を仕様公開しました。CC-Link IE TSNは1ネットワークで、I/O通信、モーション通信、安全通信を構築でき、IP通信を含む情報通信もシステムの制御に影響を与えずに、これらを全て一本化できます。

 また、TSN技術の活用により、イーサネット(Ethernet)をベースにしながら物理層などはそのままに、正確なタイムスタンプを自動で付与することができ、さらには時刻同期や優先的に通すデータを制御するスケジューリング機能によって、リアルタイム性を確保した通信を実現しています。

 これにより、異なるシステムやプロトコルの情報をまとめて収集し、非リアルタイムの情報通信が混在しても制御通信のリアルタイム性を保証しながら、タイムスタンプ情報を活用してデータ分析などを正確に行えるようになります。

 また、これらのネットワークの特長と合わせて、CC-Link IE TSNにおける無線技術の適用検討、ITとOTの融合を実現するために欠かせないセキュリティの両立を目指し、それぞれCLPAパートナーとワーキンググループ(WG)を発足し、取り組みを推進しています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る