自作ガイガーカウンターのつぶやきbot「imaocande」をよみがえらせる:注目デバイスで組み込み開発をアップグレード(24)(1/2 ページ)
注目デバイスの活用で組み込み開発の幅を広げることが狙いの本連載。今回から、東日本大震災の原子力発電所事故を受けて2011年に開発した自作ガイガーカウンターのつぶやきbot「imaocande」をよみがえらせる取り組みを紹介する。まずは2011年当時のimaocandeを振り返ってみよう。
はじめに
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、東北地方の太平洋岸を中心に東日本を大津波が襲いました。そのあおりを受ける形で福島第一原子力発電所が被害を受け、その結果として発電所外に放射能が漏れる大事故に至りました。近隣の住民はもちろん、関東以北の住民にも大きな不安を与えたことは今でも記憶に残っている方が多いかと思います。
そのとき日本国内で大きく需要が高まったのが放射線を検出できるガイガーカウンターです。しかし、メーカーでの生産体制が整わず、ガイガーカウンターの供給不足はしばらく続きました。そこで、電子工作愛好家の中でガイガーカウンターを自作するブームが起きました。今回紹介する「imaocande」もその一つです。
かつて放射線計測は政府や専門家の仕事と思っている人が多かったのですが、一般の人々にも放射線計測が広く注目を浴びたのは1989年に旧ソビエト連邦のチェルノブイリ原発(現在の地名表記はチョルノービリ)事故がきっかけでした。このときも電子工作愛好家の間で放射線計測のムーブメントが起きています。今回はそれ以来の2回目のムーブメントです。
なお、1回目のブームでは、秋月電子通商が放射線検知キットを発売していました。筆者もそれを購入した口です。放射線センサーとしては、浜松ホトニクス製のガイガーミュラー管が使われていました。残念ながら、同型の物は現在は製造していないそうです。
筆者はこのほど、ロシア製の真空管やその他電子機器を継続的に輸入している業者からオークションサイトで新品のガイガーミュラー管を入手しました。そこで、2011年に作製したimaocandeについて、今どきのビバでナウい注目デバイスを活用した新たな「imaocande2」を作製しようと思い付いた次第です。現在は、IoT(モノのインターネット)関連で便利なマイコンが色々ありますのでどれを使うか迷うばかりですね。
今回はimaocande2の開発に入る前段階として、2011年当時のimaocandeを振り返ってみたいと思います。
⇒連載「注目デバイスで組み込み開発をアップグレード」のバックナンバー
IoTの走りだったかもしれないimaocande
図1は、2011年5月の「ワイヤレスジャパン」に出展したころのimaocandeです。100均などで購入できるプラスチックケースの中に、imaocandeの回路が集積されています。
imaocandeは、単位時間当たりの放射線の検出回数をTwitter(現X)でつぶやくbotです。今でこそバズっているIoTですが、当時はまだ一般的ではなく、imaocandeはIoTの走りだったのかもしれませんね。
図1内中央、電池ボックスのとなりには、イーサネットシールドを搭載したArduinoがあります。見えにくいですが、イーサネットシールドの下にあるのがArduinoです。イーサネットシールドからは右側にRJ-45のコネクターが出ており、運用時はここにイーサネットケーブルを接続します。
イーサネットシールドを搭載したArduinoの下側にあるのがガイガーミュラー管を用いた放射線検知モジュールです。水色の円で囲んだ箇所がガイガーミュラー管です。これは秋月電子通商で販売していたキットなのですが、何カ所か改造しています。ガイガーミュラー管は、交換しやすいようにその胴体をヒューズのホルダーで挟んでいます。底部にあるリード線は緑色のブロックターミナルに挿入して、ネジで挟み込んであります。
秋月電子通商の放射線検知キットの本来の動作は、放射線を検知すると基板上のピエゾサウンダーが「ピッ」と鳴るというものです。ただ当時20歳代の筆者は、検知器のパルスをPCで取り込んで24時間計測したいという欲望にかられ、基板の下に見えるフラットケーブルのコネクターを付けた次第です。ここから検知パルスの取り出しと電源供給を行います。
電池ボックス左下のブレッドボードは配電盤の役割を果たしており、放射線検知パルスはこのブレッドボード経由でArduinoにつながります。そして左上にある電池ボックスからの電源は、このブレッドボード経由でArduinoと放射線検出キットに供給されます。なお、ブレッドボード上のGPSモジュールは今回は使っていませんが、将来自己位置についてもリアルタイムにつぶやけるようにするための準備です。
imaocandeの回路を収納しているプラスチックケースのふた側にも部品を搭載した4枚のブレッドボードがありますが、今回紹介するimaocandeでは使用していません。
imacandeのシステム構成
図2にimaocandeのシステム構成を示します。
放射線検出キットは、放射線を検出すると矩形波のデジタルパルスをArduinoのデジタル入力ピンに送ります。ArduinoはTwitter APIを用いHTTP POSTのパケットを生成しイーサネットシールド経由で送信します。そのペイロードのフォーマットなどについては後ほど説明します。
imaocandeからのHTTP POSTをTwitterが受け取りタイムラインで共有します。それらをスマートフォンやPCで取得し、対応アプリで表示する仕組みです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.