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ダイセル式生産革新から自律型生産システムへ “人”を自律させる仕組み作りとはものづくりDXのプロが聞く(2/4 ページ)

Koto Online編集長の田口紀成氏が、製造業DXの最前線を各企業にインタビューする「ものづくりDXのプロが聞く」。今回は、ダイセルのモノづくり革新センター長であり、「自律型生産システム」を主導した三好史浩氏にお話を伺いました。

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ダイセル式生産革新は0段階の予備調査が重要

生産革新の段階的アプローチ
生産革新の段階的アプローチ[クリックで拡大]出所:ダイセル

田口氏 ダイセル式生産革新は具体的にどのようなステップで進めていったのでしょうか。

三好氏 ダイセル式生産革新は現社長の小河が作り上げた手法で、予備調査→基盤整備/安定化→標準化→システム化の順で進めてこられました。

 2000年の網干工場を皮切りに、社内各工場、他社への展開が進められました。私は2世代下に入社しましたので、先輩が作り、実行してきたことを勉強し、それを進化させる形で推進する立場で関わってきました。

 最近のAI(人工知能)ブームの流れで業務を標準化し、システム化する会社が多くみられますが、成功の鍵はむしろ、その前の予備調査と基盤整備/安定化にあると思います。

 まず、改革に着手する前に予備調査の段階(第0段階)で勝てる戦いにする必要があったと聞いています。

 生産革新は既存の生産プロセス、設備をいったん肯定し、運転方法、運用の見直しなど現場改善で成果を出す手法です。改善に労力を費やしても競合に勝てないのであれば、大型投資により生産プロセスそのものを革新的に変える、あるいは事業の継続そのものを判断する必要があり、経営層の意思決定が必要であったからだといいます。

 そのため現状の実態や課題を現場作業の実態や製品のコスト構造など多角的な視点からどこにボトルネックがあるかを把握し、勝つためのマスタープランを作ることがこの段階です。例えばデジタル化でも、デジタルツールを入れるためにどういうワークフローにするかなどの議論はよくあると思います。

 われわれは順番が逆で、予備調査の段階で最終的な働き方を全部設計し、あくまでも手段としてデジタルを活用して実現するという流れです。

田口氏 予備調査はどのように進めたのですか?

三好氏 予備調査の1つの業務総点検を紹介します。縦軸に人、横軸にモノづくりの工程、斜め軸に機能を設定して、原料が工場に入荷してから出荷までの業務を洗い出します。そして誰がどんな意思決定をして業務が回っているのかを可視化します。

 具体的にはワークショップの形式で聞き役、聞かれ役を決めてヒアリングしていきます。例えば、現場の方に具体的トラブルを想定してどのように発見しますか、といったことを聞きます。そこから何を判断して誰に連絡するのかと質問をして矢印でつなげていくんですね。そうすると、縦軸に課長、部長、工場長などが登場します。


業務総点検手法と活用[クリックで拡大]

業務総点検事例[クリックで拡大]

三好氏 ヒアリングでこのU字、逆字、I字フローが見えてきて、さまざまな無駄が見えてきます。

 このヒアリングの中で、当たり前と思ってしていることが、情報を収集している行為、あるいは保管、加工、判断、調整、実行などと各階層で何をしているのかを明らかにし、どこまで人がやり、どこから機械に任せるのかを決めます。

 その後、機械に任せる業務は、工程と機能の象限に書き出し、情報化投資案件として整理します。

田口氏 手法は非常に納得度が高いですが、プロのコンサルタントが入って進めたような印象ですね。

三好氏 実際に2000年以降、現在に至るまで他社さんからの見学も継続的にあり、小河は他社へもコンサルタントとして指導してきました。われわれはコンサルタントをなりわいにしたいわけではないのですが、大きな規模の利益につながっています。

「機械に任せる業務は、工程と機能の象限に書き出し、情報化投資案件として整理します」(ダイセルの三好氏)
「機械に任せる業務は、工程と機能の象限に書き出し、情報化投資案件として整理します」(ダイセルの三好氏)[クリックで拡大]出所:Koto Online

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