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39mの超巨大望遠鏡をデジタルツインで完全管理 〜世界最大天文台が目指す未来〜メカ設計インタビュー(2/3 ページ)

European Southern Observatory(ESO:欧州南天天文台)が、チリのアタカマ砂漠で建設中の世界最大の光学望遠鏡「ELT(Extremely Large Telescope)」。nm単位の精度が要求されるこの巨大プロジェクトでは、建物全体のデジタルツイン化を視野に建設が進められているという。プロジェクト担当者に話を聞いた。

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データ管理の課題――どうする、外部パートナーとのデータ連携体制

――「全てのパートナーから異なるデータを受け取っている」とのお話でしたが、異なる形式のデータを統合管理するにはどのような課題がありますか。

ライディングス氏 データ統合には技術面と組織面の両方で大きな課題に直面しています。技術面では、多様なデータフォーマットの統合が大きな課題となっています。例えば、ドームの設計データはRevit形式で提供される一方、機械設計データはInventor形式で作成されており、これらの異なるフォーマット間での正確なデータ変換が必要です。また、モデルが非常に大規模になることによる処理能力の限界にも直面しており、作業段階ごとに適切な詳細度でデータを管理していく必要があります。

 組織面での課題は、主にチーム内での新技術の受容に関するものです。分かりやすく言うと、(データ統合によって)既存ツール以外の新たなツールでデータを扱う機会が増えてくると、20年以上の経験を持つベテラン技術者からは「従来のツールで十分だ」といった“抵抗”の声が上がってきます。さらに、新しいワークフローへの適応やデータ共有/承認フローの再構築など、作業プロセスの変更に伴う課題も存在します。

――これらの課題にどのように対応していますか?

ライディングス氏 私たちの基本方針は、プロジェクトの初期段階からデータの品質管理を徹底することです。特に、デジタルツインのような高度なシステムを構築する際、初期段階での不適切なデータは後から修正することが極めて困難になります。多くのデータを外部パートナーから受け取るわれわれのような場合、高品質で整合性のあるデータの確保が特に重要となります。

 そのため、現在は段階的なアプローチで対応を進めています。まず、機械工学データについては、1つのパッケージにまとめてNavisworksに取り込み、境界ボリュームを使用してインタフェースチェックを行うことで、自己完結型のモデルとしての機能確認と動作保証を実現しています。

 将来的には、これらのデータをACCに統合し、設計協力の過程で全体のパッケージを一元的に確認できる環境の構築を目指しています。また、基幹業務システム(ERP)と購買データとのリンク開発も並行して進めており、部品管理から調達までの一貫したデータ連携の実現に取り組んでいます。

ESOの超大型望遠鏡(ELT)の光路に設置される望遠鏡の補償光学システムミラーの一部
ELTの光路に設置される望遠鏡の補償光学システムミラーの一部。2.2×2.7mサイズのミラーは、同種のミラーとしては世界最大となる(写真は完成予想図)[クリックで拡大](写真提供:Sener)

大規模デジタルツインの実装計画とは

――ELTプロジェクトではデジタルツインを構築しているのですか。それはどのような規模で実装しているのでしょうか。

ライディングス氏 2024年4月に取り組みを開始した段階ですが、建物全体とその背後にある全ての機械系統をカバーする大規模なシステムを計画しています。規模感を具体的に説明すると、現在取り扱っているドームと主構造の調整モデルだけでも、約150のIFCファイルとRevitファイルがあり、これらは防火システム、構造システム、冷却システムなど、さまざまな分野をカバーしています。

 さらに、主鏡798枚のセグメントのうち、1つのセグメントには約1000の個別のコンポーネントが含まれており、これを全セグメントに展開していく予定です。

 実装の中心となるのが振動検知システムです。望遠鏡のミラーは振動に非常に敏感なため、望遠鏡全体に何百万という高精度センサーをグリッド状に配置する計画です。とりわけ主鏡周辺部には特に高密度にセンサーを設置し、さらに免震装置の各ポイントにも状態監視センサーを配備します。

 これらのセンサーから得られるデータは、光学像で見られる問題とその原因の関連付けに重要な役割を果たします。例えば、電子キャビネットのベアリングやファンの異常といった小さな問題でも、観測データに影響を与える可能性があります。このデータがなければ、画像に問題が見られても、その原因を特定することが困難です。

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