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将来に続く「理想のデータモデル」を作るため、組織の知見を集約させよ:真に「データ中心の製造DX」を実現するには(3)(2/3 ページ)
製造業でも経営や業務のデータドリブンシフトの重要性が叫ばれるようになって久しい。だが変革の推進は容易ではない。本稿では独自の「概念データモデル」をベースに、「データを中心に据えた改革」に必要な要素を検討していく。
(2)作成手順
概念データモデルの作成は3ステップに分けられる。
- ステップ1:概念データモデルの構造版作成
概念データモデルの作成は検討範囲が広いため、まずは全体の構造や論点を整理してから詳細検討に着手することを推奨する。
はじめに、顧客提供価値や経営戦略を実現するために必要なデータと、その実現状況を測定するための指標に必要となるデータを洗い出す。バリューチェーンの業務機能ごとに、それらのデータがどのように発生、編集、活用されるべきかを考える。データモデルと言うと、E-R図(Entity Relationship Diagram:エンティティ関係図)やデータ項目定義書を思い浮かべることも多いと思われるが、この時点ではそれらのような詳細なデータは不要である。
構造を整理する目的は、概念データモデルを作る上で重要になりそうなデータを洗い出すことと、それらのデータを業務機能に割り当て、実際にどのような業務で使われるデータなのかを明確にすることの2つである。これらを行うことで、概念データモデルを作るための具体的な実行計画を作成でき、議論すべき論点を設定できる。
バリューチェーンを業務機能単位に分割するためには、自社ビジネスへの理解が必要であり、実現されるべきことを考えるためには内外の環境分析や経営課題への理解が必要となる。ここまでの活動は経営層と事務局中心で進められ、システム部門や業務部門は、情報を提供するレベルにとどまる。構造版を作成するとともに、業務機能ごとの実行計画を立案してこのステップは完了する。 - ステップ2:概念データモデルドラフト版作成
ステップ1で作成した構造版と実行計画を用いて、システム部門のメンバーを中心に業務機能ごとに概念データモデルを作成する。構造版で作成したデータを細分化およびグループ化し、それぞれをつなぐキーデータや、顧客への価値提供、経営戦略上重要なデータを明確にする。
グループ化やキーデータは、E-R図でいうところのエンティティやプライマリーキーに相当する。ただし、論理データモデルほどの厳密性は必要ではなく、業務の流れが分かるレベルで十分だ。この段階では、現状のデータベース構造を考慮する必要はあるが、現状を明確にするための概念データモデルを作っているわけではないことを意識してほしい。作成したいのは現状の業務ありきではなく、理想的なデータの状態を仮定したモデルである。
例えば、現在、各国拠点で商品コードが異なっており、受発注業務において変換マスタを用いているからといって、商品コードの変換マスタをデータモデルの中に盛り込む必要はない。グローバルで同じ商品コードを使っている状態が理想であれば、その状態をデータモデルとして表現する。ステップ2では、業務機能別に概念データモデルを作るところで完了となる。
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