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将来に続く「理想のデータモデル」を作るため、組織の知見を集約させよ真に「データ中心の製造DX」を実現するには(3)(1/3 ページ)

製造業でも経営や業務のデータドリブンシフトの重要性が叫ばれるようになって久しい。だが変革の推進は容易ではない。本稿では独自の「概念データモデル」をベースに、「データを中心に据えた改革」に必要な要素を検討していく。

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 これまで第1回第2回で概念データモデルが必要な理由と実際に役立つ活用ケースを紹介してきた。第3回では、概念データモデルを作成し、維持管理する方法について紹介する。

 これまでお伝えした通り、本連載で紹介している「概念データモデル」は一般的な理解とは異なり、経営者の思いや実現したい将来像の観点を盛り込んで、バリューチェーン全体でモデルを作成するものだ。その点を理解した上で、作成、維持管理について考えてほしい。

⇒連載「真に『データ中心の製造DX』を実現するには」のバックナンバーはこちら

概念データモデルの作成

 まず、概念データモデルを作成する際に留意すべきことを(1)体制構築と(2)作成手順の2つに分けて述べる。

(1)体制構築

 概念データモデルは、業務要件を明確にする前にバリューチェーン全体のデータモデルを作成し、これを憲法として個々の改革を進めることになる。そこで、バリューチェーン全体を理解した人材が必要になるわけだが、自社の人材を見渡したときに、バリューチェーン全体のデータモデルを語れる人材はどれほどいるだろうか? 多くの企業ではそのような人材は少なく、業務領域ごとにエキスパートがいるのではないかと思われる。

 そのため、複数の部署から人材を募ることになる。ここでは、エキスパートによる業務領域ごとの検討と、企業の将来像を考えて全業務機能に横串を通す検討の両方を推進することが肝要だ。

 体制構築としては、横串を通すリーダーはデータモデル構築の専任となって活動することが多いが、エキスパートは現状業務との兼ね合いで専任化できないことが多い。そのため、エキスパートの負担増加に伴う業務への影響を最小化させるべく、短期プロジェクトとして集中的に推進することがほとんどだ。

  • 経営層の役割
     概念データモデルには、顧客提供価値の向上や経営戦略の実現といった要素を含めるため、経営層の積極的な参加も重要になる。多くの企業の場合、DX(デジタルトランスフォーメーション)やデータマネジメントの役割を担う経営層が参画している。
  • システム部門の役割
     概念データモデルを作る実務にあたっては、システム部門の人材が中心になる。これは製造業の企業の実態として、データに精通しているのは業務部門よりシステム部門の人材であることが多いことによる。システム部門の人材を活用することで、過去の取り組みにおいて、あるべき姿として実現を目指したがさまざまな事情で断念したデータ改革要素を明らかにしやすいというメリットもある。
  • 業務部門の役割
     業務部門の参画も必要だが、概念データモデル作成初期における役割は少ない。あるべき姿を明確にするためには、現状業務の制約を必要以上に考慮しない方がよいからだ。概念データモデルの作成目的の観点から、個々の業務の詳細なモデル化も不要である。
     業務部門の役割が増すのは、概念データモデルのドラフト版の完成後だ。主にユースケースを用いた概念データモデルの検証のステップ(後述)において、概念データモデルのデータが、顧客提供価値の向上や経営戦略の実現に貢献するか、机上でシミュレーションを行う役割を担う。
  • 事務局の役割
     事務局自体の役割は、一般的なプロジェクトと同じであり、活動計画立案や進捗管理、課題管理、コミュニケーション管理、リソース管理となる。ただし、概念データモデルの作成は、バリューチェーンの各業務のデータモデルを同時並行で作成することになるため、各活動の横串管理(作成物の体裁、内容の矛盾、作成タイミングなどをそろえること)が重要になる。

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