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デジタル怪獣を撃破せよ! データ/AI活用の成功事例にみる生産性向上の手法とは製造業の生産性を飛躍させるデータ/AI活用の全貌(後編)(1/2 ページ)

製造業の生産性や稼働率を高めるために大きな期待がかけられているのがデータとAIの活用だが、多くの企業でうまくいっていない現状がある。本稿は、前編でデータ/AI活用を阻む“デジタル怪獣”を紹介し、後編ではその退治法となるアプローチや成功事例などを解説する。

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「Data is the sword of the twenty-first century, those who wield it well, the samurai.(データは21世紀の剣であり、それを巧みに扱う者こそサムライである。)」――ジョナサン・ローゼンバーグ(元Google 製品担当上級副社長、現アルファベット 経営陣および取締役会顧問)

 本稿の前編では、製造業が直面する多くの課題と、課題解決に有効なはずのデータ/AI(人工知能)の活用を阻む7体の“デジタル怪獣”の存在について述べました。これらの怪獣を倒し、作業者や機械の生産性や稼働率を向上するためには、どのような全体的アプローチが必要なのでしょうか。今回の後編では、その具体的な方法と実際の成功事例を紹介します。

デジタル怪獣を克服するための全体的な取り組み

 デジタル怪獣を倒すためには、組織全体での戦略的な取り組みが必要です。以下の3つの柱に基づいてアプローチすることで、効果的に課題を克服することができます。

1.明確なビジョンと組織文化の改革

 データ/AI活用による生産性や稼働率の向上を実現するためには、経営層が明確なビジョンと戦略を策定し、それを全社で共有することが不可欠です。例えば、「3年間で生産ラインの稼働率を10%向上させる」という具体的な目標を設定します。これにより、組織全体が同じ方向を向き、一体となって取り組むことが可能になります。

 また、データ/AI活用を組織文化として根付かせるためには、全社員がその価値を理解し、主体的に取り組む環境を作ることが必要です。成功事例の共有や社内コミュニティーの形成、インセンティブ制度の導入などが効果的です。組織内でデータ活用のメリットを実感できるようになると、自然とデジタル怪獣は姿を消していきます。

2.組織体制と人材の強化

 部門間の壁を取り払い、組織横断的なデータ活用体制を構築します。データ基盤の整備だけでなく、データガバナンスの強化やデータ品質の確保も重要です。これにより、各部門が連携して全体最適を図ることができます。

 さらに、データ/AI活用の内製化と人材育成を推進します。社員がデータ分析やAIモデルの構築を自ら行えるようになることで、外部依存を減らし、持続的な改善活動が可能になります。トレーニングプログラムや研修の実施、データサイエンティストの育成などが具体的な取り組みとなります。人材が育つことで、組織全体のデータリテラシーが向上し、デジタル怪獣に遭遇した場合であっても、それに立ち向かう力が備わります。

製造業におけるデータ/AI活用の全社推進時の組織体制例
製造業におけるデータ/AI活用の全社推進時の組織体制例[クリックで拡大] 出所:DataRobot

3.効果的なツール活用と迅速な実行

 目的に沿ったツールや技術を活用し、実際の業務改善につなげます。ツールや技術の導入は、明確な目的と活用方法を持って行い、導入後の運用計画や効果測定を重視します。使いやすく、現場のニーズに合ったツールを選定することが重要です。

 また、小規模な成功を積み重ね、それを全社的に展開します。PoC(概念実証)で得た成果を生かし、本格導入へと迅速に移行します。ビジネス課題に直結したデータ活用を行い、投資対効果を見える化することで、継続的な改善を推進します。こうした迅速な実行力が、デジタル怪獣を退け、組織の成長を加速させます。

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