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機構制御系のモデリング(その1) 〜機構と制御の基本について考える〜1Dモデリングの勘所(36)(3/4 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第36回では「機構制御系のモデリング(その1)」と題し、機構と制御の基本について考える。

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制御の基本

 次に、摩擦のない床面に静止している質量mの物体に対し、外力f(t)が作用している場合の質点の運動を考える(図7)。

質点の運動
図7 質点の運動[クリックで拡大]

 この質点の運動方程式は、

式7
式7

となる。この運動方程式を初期条件(t=0で変位、速度が0)の下、ラプラス変換すると式8となる。

式8
式8

 これから、

式9
式9

となり、伝達関数は式10で定義できる。

式10
式10

 次に、外力が作用したときの質点の応答について考える。外力の代表的なものとして図8に示す「ステップ入力」と「インパルス入力」を考える。

ステップ入力とインパルス入力
図8 ステップ入力とインパルス入力[クリックで拡大]

 ステップ入力us(t)とは、ある時間(図8ではt=0)に、単位力が作用し、その後この状態が継続した状況である。一方、インパルス入力δ(t)とは、ある時間(図8ではt=0)に瞬間的に無限大の力が作用した状況である。δ(t)は「デルタ関数」といい、式11が成立する。

式11
式11

 ステップ入力は物体をぶら下げた状態、インパルス入力は衝撃力を与えた状態で、いずれも日常的に経験する力の入力形態であり、ラプラス変換を用いることにより、これらの効果を表現、解析可能とする。通常の方法でこれらを模擬することは容易ではない。

 図7について、力がステップ状に作用したときの質点の応答について考える。ラプラス変換の式を参考にすると、ステップ応答(ステップ入力に対する系の応答)は式12となる。

式12
式12

 すなわち、ステップ入力を受けた静止した質点は、式12を時間で2回微分して、一定加速度1/mで運動することが分かる。

 インパルス応答も同様にして式13で求まる。

式13
式13

 すなわち、インパルス入力を受けた静止した質点は、式13を1回微分して、一定速度1/mで運動することが分かる。

 このように、静止した質点にステップ入力、インパルス入力が作用すると、それぞれ一定加速度、一定速度で運動を開始して、次の外力が作用するまでこの運動を継続する。一般に、物体は何らかの外乱を受けるので、摩擦のない床面に静止している質点は制御の視点からいうと“安定ではない”ということになる。

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