生成AI活用で米国に「追い抜かれた」日本 初動の早さが失われた理由:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
PwC Japanグループは、生成AI活用の実態調査について、日本と米国での結果を比較したレポートを公開した。
PwC Japanグループは2024年10月4日、生成AI(人工知能)活用の実態調査について、日本と米国での結果を比較したレポートを公開した。米国と比較して、日本では生成AIの活用範囲が業務効率化に集中しており、また、検証フェーズで足踏みして実装フェーズ以降に先に進めていない現状が示唆された。
生成AI活用の推進度、サービスや技術の認知度に差
調査は、日本版は2024年4月3日〜8日、米国は2024年5月23日〜28日にかけてWeb上で実施した。売上高500億円以上の企業で、生成AIについて意思決定や企画検討など何らかの形で関わりがある課長職以上を対象に行った。
自社の生成AI活用の推進度合いについて尋ねると、日本では「活用中」が43%、「推進中」が24%で合計67%が推進中以上のステータスだった。一方で、米国では「活用中」が43%、「推進中」が48%で合計91%に上る。また生成AIの他社での活用事例への関心度は、日本は「とても関心がある」が32%、「関心がある」が59%だったが、米国では「とても関心がある」が54%、「関心がある」が42%と違いがみられた。
PwCが2023年10月〜11月にかけて実施した調査では、生成AIが自社業務に受け入れられているかという質問に対して、日本は米国や欧州、中国やアジア地域と比較して同意を示す回答が多かった。このことを踏まえてPwCコンサルティング 執行役員 パートナーの三善心平氏は、「生成AI活用に対する日本の初動は他国と比べても非常に早かった。日本企業のこれまでの動きと比べると、企画や技術検証もスピード感をもって進めていると認識していた。だが、残念ながら2024年の春時点では米国の方が『推進中』以上のステータスの企業が多くなっており、その意味で『追い抜かれた』と表現できる」と説明した。
業界ごとの生成AIの推進度も日米間で違いがみられた。日本では「通信」「テクノロジー」「サービス/接客業」が推進度のトップ3に並んでいるが、米国では「銀行/証券/保険/その他金融サービス」「テクノロジー」「建設/エンジニアリング」となっている。
生成AIサービスなどの認知度にも違いが見られた。日本では「ChatGPT」や「Azure OpenAI Service」「Copilot」や「GPT」シリーズなど、OpenAIやマイクロソフトが提供する大規模言語モデル(LLM)やサービスの認知度が高い状況になっている。しかし米国では、「Google Bard」や「Gemini」「Amazon Bedrock」やMetaの「Llama」シリーズなど多様なサービスやLLMの名称が挙がった。米国の方が幅広い選択肢からサービス活用を検討している可能性が示唆される。
この他、生成AI活用において直面した課題についても差があった。日本では「必要なスキルを持った人材」「ノウハウがなく、どのように進めればよいか、進め方が分からない」「活用のアイデアやユースケースがない」が上位に挙がったが、米国ではこれらに並んで「技術活用のリスクが大きい」「周囲から理解を得ることが難しい」などを挙げる回答者も多かった。この違いについて三善氏は、「日本は検討段階での仕組みづくりを試行錯誤しており、米国は業務活用する上での具体的なリスクへの対策を検討している、といった差が課題間の違いとして表れているのではないか」と推測する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.