4K120HzのHDMI信号を0.1msで長距離伝送信号に変換、NTTがFPGAのIPで技術提供:組み込み開発ニュース
NTTは、4K120Hz/フルHD240HzのHDMI信号を世界最低遅延とする0.1ms以下で長距離伝送信号に変換する技術を開発した。同社の光通信ネットワーク「IOWN APN」と組み合わせることにより、低遅延と高精細を両立した映像伝送が可能になり、その瞬間の動きと音を4K/120フレームでリアルタイムに離れた拠点に伝送できるという。
日本電信電話(NTT)は2024年10月8日、4K120Hz/フルHD240HzのHDMI信号を世界最低遅延とする0.1ms以下で長距離伝送信号に変換する技術を開発したと発表した。同社の光通信ネットワーク「IOWN APN」と組み合わせることにより、低遅延と高精細を両立した映像伝送が可能になり、その瞬間の動きと音を4K/120フレームでリアルタイムに離れた拠点に伝送できるという。また、変換回路はFPGAに実装可能なIPとして実現しており、今後はライセンス販売で提供していく方針である。
今回開発した技術は、音声を含む映像信号(HDMI信号)について、大容量/固定帯域/固定遅延のレイヤ1信号(OTN信号)に直接収容することで、映像信号の圧縮伸張にかかる処理時間が不要になるとともに、映像品質の劣化や通信による遅延変動なしに遠隔地への映像伝送が可能になる。その結果として、光ファイバーで信号を伝送するのに物理的にかかる遅延時間(1km当たり5μs)が無視できる程に小さい場合、送信側での映像入力から受信側での映像出力までの遅延時間を0.1ms以内に抑えている。
また、4K120HzやフルHD240Hzという高解像度/高リフレッシュレートの映像信号を圧縮なしに伝送できるので、非常に動きが速い映像でも高精細かつ動きに劣化のない状態で、遠く離れた場所への伝送が可能になる。
今回開発したFPGAのIPは、AMDのハイエンドFPGAである「Vertex Ultrascale+シリーズ」と「Versalシリーズ」が動作環境となっている。HDMIの対応バージョンは2.0と2.1で、1ポート分の音声と映像の信号をODUflexに収容できる。HDMI信号に加えて、USB信号の低遅延OTN収容にも対応している。対応バージョンはUSB2.0で、対応デバイスはキーボードやマウスなどのHIDデバイスだ。信号収容処理時間は1ms以内となっている。HDMI信号とUSB信号の低遅延OTN収容を行うことで、遠隔地の映像を高精細かつリアルタイムにディスプレイ上で確認しながら、手元にあるキーボードやマウスを使って遠隔地側にあるデバイスを操作することも可能になるというわけだ。
今回の技術とIOWN APNとの組み合わせにより、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といった没入感の高いアプリケーションに加えて、拠点間でのタイミング合わせが重要な遠隔アクティビティー(遠隔合奏、遠隔合唱、ダンスレッスンなど)や、人物同士での遠隔での掛け合い(ディベート、漫才など)もこれまで以上の低遅延かつ安定的な遅延環境で実現することが可能となる。また、高精細映像を低遅延で遠隔地へ届けられるので、これまでリアルタイムでの高精細映像での遠隔監視が難しかった工場のライン監視や鉄道/交通の監視などの領域への適用も期待できる。
VRやARの技術発展により、離れた場所にいながら多数の人が同じ空間を同じ時間に楽しんだり、共同作業を行ったりといったリアルタイムコミュニケーションにおいて、リアルな体験を得られる没入感の高いアプリケーションの拡大が期待されている。しかし、没入感を得るためには、映像を複数地点で同期して感じられる「リアルタイム性」と、実物を見ているように感じられるレベルの「高精細映像」の両方が求められる。
そのため、オフィスや家庭などで幅広く使われているカメラやモニターなどの映像機器から出力されるHDMI信号を、遠く離れた場所へ伝送する時にも“低遅延”かつ“高画質/高音質なまま”であることが求められる。しかし、IP網利用を前提とした従来技術ではネットワーク遅延及びネットワークの帯域不足に伴う信号圧縮による遅延や、信号圧縮による画質/音質低下が発生してしまうため、没入感の高いアプリケーションで求められる「リアルタイム性」と「高精細映像」を実現することが難しかった。
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