検索
連載

文字の視認性をデジタルで定量評価、使いやすさを追求するカシオの関数電卓デザインの力(2/5 ページ)

カシオ計算機は関数電卓の新機種開発において、製品文字の視認性数値化のアプローチを取り入れ、文字の見やすさ/製品の使いやすさの向上を図っている。取り組み内容について担当者に話を聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

視認性スコアを算出し、独自の閾値に基づき良しあしを評価

 製品文字の視認性数値化のアプローチについて、カシオでは筐体色と筐体に印刷された文字色を専用環境でそれぞれ抽出し、互いの色差がどれだけ離れているかを、色差式「CIE DE2000」を用いて人間の知覚を考慮した指標に置き換えて算出し、“視認性スコア”として数値化。そして、そのスコアと独自基準の閾値(数値は社外秘)とを比較し、クリアしていればユーザーにとって見やすいデザイン(色の組み合わせ)であると評価される。

 「使用している手法などは、あくまでも一般的なものの組み合わせになるが、これを関数電卓に印字されている文字の視認性の評価に用いている点は、カシオならではのユニークな取り組みといえるだろう」(土屋氏)

製品文字の視認性数値化のアプローチについて
図2 製品文字の視認性数値化のアプローチについて[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機

 例えば、図2(左側)のように、暖色系の組み合わせパターンA(左)と、寒色系の組み合わせパターンB(右)それぞれの筐体色と文字色の色差を、一般的に知られている「CIE LAB(Lab色空間)」で数値化してみると、両パターンで同じ値(この例の場合は21.2)となり、「視認性はほぼ同じ」という結果となる。そこで、カシオでは「より人間の知覚を考慮した指標に置き換え可能な『CIE DE2000』を採用することにした」(鈴木氏)という。

 筐体色と筐体に印刷された文字色の測定には、羽村技術センター内に構築した測定環境を用いている。物体色を測定するための分光放射輝度計「CS-2000」を備え、室内照明に関しては、JIS規格を参考に国内の教室環境(ユーザー使用環境を想定)を再現している。ちなみに、分光放射輝度計については、もともと同社のカメラ部門が液晶パネルの画質評価で用いていたものを流用しているとのことだ。

測定環境について
図3 測定環境について[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機
カシオ計算機 羽村技術センター 開発本部 機構開発統轄部 機構技術開発部 機構技術開発室の鈴木健也氏
カシオ計算機 羽村技術センター 開発本部 機構開発統轄部 機構技術開発部 機構技術開発室の鈴木健也氏

 「この環境を用いて、数十種類の既存製品の測定を行った。筐体色と筐体に印刷された文字色の色差をCIE DE2000で数値化し、視認性スコアとして全てスコアリングして、ユーザーや関係者、社内の声も踏まえ、良否の判断基準となる社内独自の閾値を設定した」と鈴木氏は説明する。

 この閾値が、今後の関数電卓の新機種開発における視認性の判定基準となるが、最終的な視認性に対する判断は、視認性スコアを踏まえて関係者(人)が判断するという。

 「既存製品の中には、今回独自に設定した閾値よりも低い視認性スコアの製品も含まれるが、従来の判定基準をクリアしたものであり、使用上全く問題はない。ただ、今後新たに開発する新機種については、より良い製品づくりを追求するという観点から、基本的には閾値以上になる色差で筐体色と筐体に印刷された文字色を決めていくことになる」(土屋氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る