デンソーの自動化を学べる「LAスクール」 真因を探る人材の育て方とは:製造業のヒトづくり最前線(1)(2/3 ページ)
モノづくりの根本たる人材をいかに育てるか。これはベテランの高齢化や技術継承問題に悩む製造業全体の共通課題だ。本連載では先進的な人材育成を進める企業にスポットを当てて、その取り組みを紹介する。第1回はデンソーの「Lean Automationスクール」だ。
企業規模にかかわらず「当たり前」を見直す機会に
実践力の養成では、LAスクール専用の「ラーニングファクトリー」という模擬ラインを使います。この自動化ラインに、あえて「Leanではない不備」を残して検証するグループワークを行っています。また、産業用ロボットの操作実習や、Lean Automationを実践する工場の見学なども行います。
仲間づくりでは、さまざまな業界の生産技術者が一堂に会し、グループワーク形式で課題に取り組みます。グループワークでの活発なコミュニケーションを通して、参加者は新たな気付きを得られます。同業種や異業種とのネットワーク形成やコラボレーション創出も期待できるでしょう。
原田浩史氏(原田氏) 私たちが特に強くこだわっているのが「トータル視点」です。細かく分解すると、2つの大事な視点があります。
1つは、製造工程が「ロングラン」であることへの認識です。Lean Automationにおける業務合理化プロセスは、自分の部署が関わる部分だけではなく、製造工程の初めから終わりまで全体を見通します。そのため、受講者の皆さまが自社の生産ラインで行う自動化の検証や改善の作業量は膨大なものになります。だからこそ、まずは全工程を把握し、道筋を立てようとする意識が大切なのです。
2つ目は、製造工程に関わる者同士が関係部署の役割を互いに理解し合って、連携することです。1つの製品の製造においても、異なる部署が担当する前工程と後工程や、構造体を組み上げる部門と歯車など機構部品を製造する部門とでは、相互理解が行き届かない場合もあるかと思います。
Lean Automationの計画に当たって、自分の部署の工程で行う作業についてはよく知っていても、他部署の作業には理解が及ばず、現場の苦労を無視した計画になるのはよくあることです。各現場の従業員が腹落ちするように計画立案することを大切にしています。
――LAスクールの運営において、苦心されている点はありますか。
横瀬氏 Lean Automationを分かりやすく伝えるために、毎回の講義後に講師と改善点を話し合い、教材や教え方のレベルアップを継続的に行っています。この「継続的な改善」そのものがLeanの思想における重要ポイントで、私たちが意識的に実践していることでもあります。
LAスクールは「教える場」ではなく、私たちの知見を「伝える場」です。私たちは専門教育機関ではありません。あくまで一製造業であり、受講者と同じ立場です。受講者が現場で感じている困りごとを聞き、その解決策を考えることで私たち自身も学んでいます。そのため、当社のエンジニアから講師を選抜する際には、受講者の声を聞き、自ら学び続ける姿勢を持つ人材を選んで、育成することにしています。
原田氏 Lean Automationを「(デンソーという)大きなリソースを持つ企業だからできることだ」と思う方もいます。しかし、私たちはそうは考えていません。「無駄を見える化し、どうつぶし込むか」ということは、規模や業態に関係なくできることなのです。その点をしっかりと感じ取ってもらえるよう、伝え方を工夫し続けています。
そのために、受け取る側である受講者の皆さまにも大切にしていただきたいことがあります。それは、問題意識を持ち続け、真因にたどり着こうとする姿勢を持つことです。LAスクールではそういった思想や価値観を、座学やグループワークを通じて深掘りできるカリキュラムとしています。
その結果として、受講後の感想では「当たり前のことができていなかったと見直す機会になった」といった声を多くいただいています。また、グループワークを通して他社の考え方に触れ、「この学びを生かして、自分たちなら何ができるか」と前向きに考える機会ともなっているようです。
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