MC68000に最適化されたRTOS「pSOS」は波乱万丈の運命を経てVxWorksのカーネルに:リアルタイムOS列伝(51)(1/3 ページ)
IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第51回は、MC68000への最適化によって1980〜1990年代に広く採用されたRTOS「pSOS」を紹介する。
「pSOS(portable Software On Silicon)」は、本連載第1回の表1にもちょっとだけ名前が出てくる。WindRiver pSOSという名前になっているが、2011年位までは2%程度のシェアを持っており、このあたりで命運が尽きた感じだが、よくここまで持ったというべきか。このリアルタイムOS(RTOS)もなかなか激しい運命をたどっている。
カリフォルニアのSCGが1982年に開発
pSOSはもともと、カリフォルニアにあったSoftware Components Group(SCG)という企業で1982年に開発された。開発者はそのSoftware Components Groupの創業者兼社長であったAlfred Chao氏で、企業といっても少人数の小さなものだったようだ。
このpSOSはSCGの目玉商品であり、pSOSと周辺ソフトウェアや開発環境をまとめて顧客に提供していた。pSOSは、1980年代には非常にポピュラーなRTOSとして利用された。実はこれ、ちょうどタイミングが良かった。1980年にMotorolaがMC68000を発売し、これは当時のEmbedded Systemに広範に採用されたわけだが、pSOSはまさにこのMC68000ベースのEmbedded Systemに最適というか、MC68000ベースのシステムでしか利用できなかった。その理由は、そもそもMC68000のアセンブラで記述され、しかもMC68000のアーキテクチャに最適化された構造を取っていたため、他のアーキテクチャへの移植が困難というか作り直しになるためだった。ただし、MC68000ベースでシステムを構築する開発者にとっては省フットプリントでレイテンシも少ないpSOSはRTOSとして非常に便利であり、それもあって急速に普及が進んだ格好だ。
ちなみにSCGは自社開発の製品以外の販売、あるいは外部からのソリューションの導入も積極的だったようだ。買収される直前の話であるが、まず1991年10月にはフランスのChorus Systemesと提携し、同社が提供するマイクロカーネルベースのChorus/Mix分散オペレーティングシステムを米国で販売していくことを発表している。
同年11月にはサンディエゴに拠点を置くTelesoftと提携。同社が提供するリアルタイムAdaのライセンスを取得している。TelesoftはSPARCをホスト、MC68000をターゲットとするクロス開発環境を提供しており、このターゲットでpSOS+上でAdaのランタイムが実行できるようになる、というものだった。またこのTelesoftは同時にTCP/IP Network ComponentであるpNA+、ターゲット常駐型デバッガのpROBE+、リアルタイムファイル管理システムのpHILE+もSCGに提供しており、これらはpSOS+のオプションとしてこの後も提供されることになった。
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