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リアルタイムOSとは何か、ここ最近10年の動向を概説するリアルタイムOS列伝(1)(2/3 ページ)

IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第1回は、リアルタイムOSのここ最近10年の動向について概説する。

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組み込み機器でRTOSはどれくらい使われているのか

 実は定量的なデータもある。2009年はtechinsights、2011年からはEETimesが中心となって、2年に1回の頻度で「Embedded Market Study」という組み込み業界の動向レポートが定期的にリリースされている。

 例えば、トータル73ページにわたる2009年レポートの目次は以下のようになっている。

  • Methodology and Respondent Characteristics
  • Current Embedded Environment
  • Embedded Design Process
  • Operating Systems
  • Microprocessors
  • FPGAs and Custom Logic
  • Outsourcing

 そして、4番目にあるOperating Systemsの冒頭で、「現在プロジェクトでOSあるいはRTOS、カーネル/スケジューラ類を使っているか?」というアンケート結果がまとまっているが(図1)、おおむね7割のプロジェクトが何らかのRTOSないしOSを使っている、としている。実はこの傾向は昨今だと若干下がって6割程度になっている(図2)が、それでもまだOSなりRTOSを使うというケースが多い。

図1
図1 2006〜2009年は大体7割ほどが何らかのOS/RTOSの類を使っているとする。ただこの当時はMCUの性能が低く、x86プロセッサを使ったシステムがかなり多かったことも影響はあると思う(クリックで拡大) 出典:TechInsights
図2
図2 昨今はやや数字が下がり気味だが、これはMCUの性能が飛躍的に向上しており、これまで処理性能が間に合わないという理由でx86を使っていた層がCortex-Mに切り替えた部分も多少はあるだろう(クリックで拡大) 出典:EETimes

 では「どんなOS/RTOSを使っているか」を、2008〜2019年にかけてまとめてみたのが表1である(2016年と2018年はデータが掲載されていないので省いている)。

年度 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2017 2019
調査数 745 1152 1138 1440 1302 1696 903 1096 619 468
Embedded Linux 22% 21%
InHouse/Custom 14% 8% 8% 22% 24% 18% 17% 19% 19%
FreeRTOS 8% 13% 12% 13% 17% 22% 20% 18%
Ubuntu 12% 13% 15% 14% 11% 14%
Android 13% 16% 17% 14% 13% 13%
Debian 9% 13% 12% 8% 8% 13% 13%
Windows 10 10%
Micrium μC/OS 9% 9% 10% 11% 10% 6% 11% 27% 9% 7%
TI RTOS 4% 4% 3% 5% 6%
Windows Embedded 14% 12% 12% 12% 10% 11% 11% 7% 8% 6%
GreenHills Integrity 7% 7% 4% 5% 4% 3% 3% 3% 2% 5%
WindRiver VxWorks 21% 18% 17% 12% 11% 7% 8% 6% 4% 5%
TI DSP/BIOS 7% 6% 11% 8% 8% 7% 8% 5% 5% 5%
Analog Devices VDK 3% 3% 3% 4% 3% 3% 3% 4%
Keil RTX 4% 5% 5% 7% 5% 4% 5% 8% 4% 4%
ExpressLogic ThreadX 3% 3% 4% 4% 3% 2% 3% 4% 3% 3%
Windows CE 19% 12% 13% 12% 9% 8% 8% 6% 5% 3%
Red Hat IX Linux 11% 8% 8% 7% 5% 5% 4% 4% 3%
BlackBerry QNX 6% 4% 4% 4% 4% 3% 5% 4% 3%
Freescale MQX 5% 5% 5% 3% 2%
eCOS 4% 3% 3% 4% 2% 2% 2% 2% 2%
WindRiver Linux 4% 4% 2%
LynuxWorks LynxOS 6% 3% 2% 2% 2% 2% 2%
CMX RTX/EmbOS 2% 2% 2% 2%
OSEsystems OSE/OSEX 2% 1% 2%
WITTENSTEIN high integrity systems 2%
Segger embOS 2%
Angstorm Linux 4% 4% 6% 4% 3%
Mentor Nucleus 6% 6% 6% 5% 4% 2%
OSEK(Metroworks OSEK Turbo) 1% 2% 3% 3% 2% 2%
MontaVista MV Linux 7% 4% 5% 3%
QNX Neutrino 2% 4% 3% 3%
WindRiver pSOS 3% 3% 3% 2%
Symbian EPOC 2% 2% 2% 2%
Wind River Platform neLinux 2% 2%
LynuxWorks BlueCat 2% 1%
Quadros RTXC 1% 1%
KADAM AMX 1% 1%
表1 組み込み業界における利用OS/RTOSの推移 出典:Embedded Market Study

 全体を通してみるとLinux系列(Embedded Linux/Ubuntu/Android/Debian/Red Hat IX Linux/Wind River Linux/MontaVista MV Linux/Wind River Platform neLinux)がかなり多いが、これはArmの「Cortex-A」系のCPUコアを内蔵するアプリケーションプロセッサを利用した組み込み向けシステムがかなり広範に採用されていることの裏返しでもある。こうしたアプリケーションプロセッサはメモリを4G〜8GBほども実装し、ほぼフルスペックのLinuxがそのまま稼働するから、という話である。

 ある程度の筐体の大きさが許容される、例えばATMとかキオスク端末、デジタルサイネージ/電子掲示板といったものは、そんなわけでArmのCortex-Aベースのアプリケーションプロセッサの上にLinuxが載り、その上でアプリケーションが動いている。Windows 10とかWindows Embedded(ここにはWindows Embedded 7とかも含む)も同じと考えてよい。

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