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高いエネルギー密度と急速充放電を両立する、小型リチウムイオン電池向けの新構造研究開発の最前線

豊田中央研究所はリチウムイオン二次電池の新たな電極構造「ファイバー電池」を開発した。【訂正あり】

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 豊田中央研究所は2024年9月25日、リチウムイオン二次電池の新たな電極構造「ファイバー電池」を開発したと発表した。この構造は、繊維状のユニットを束ねることで、エネルギー密度と急速充放電性能を両立する他、サイズや形状を柔軟に変えることもできる。

4つの試験電池をドローンに搭載し安定して飛行させることに成功

 ファイバー電池は、負極である炭素繊維を中心に配置し、その周囲をセパレーターと正極で覆った同心円状の繊維構造を基本ユニットとしている。同心円状の電極構造は、従来のシート積層型に比べて、電極の対向面積を大きくすることが可能で、電極内のイオン伝導経路を短くできる。こうした特徴により、従来のシート積層型電極では難しかった高エネルギーの密度化と急速充放電性能の両立を実現した。

(a)ファイバー電池ユニットの構造、(b)ユニットを束ねた状態、(c)束ねたユニットをラミネートした試験電池、(d)ドローンに搭載した様子
(a)ファイバー電池ユニットの構造、(b)ユニットを束ねた状態、(c)束ねたユニットをラミネートした試験電池、(d)ドローンに搭載した様子[クリックで拡大] 出所:豊田中央研究所

 この電池は必要な容量に応じてユニットを束ねて並列につなぎ、パッケージングして使う。1本あたりの直径はおよそ300μmで、288本束ねると鉛筆1本と同等のサイズになる。束ねる本数や形状は自在に変更できるため、用途に応じたさまざまな使い方が可能になる。例えば、デバイスの骨格をファイバー電池で構成すれば電源スペースが不要になり、軽量化や省スペース化を図れる。

 今回の研究では実際にドローンの骨格にファイバー電池を応用する実験を行った。実験では、288本のユニットを束ねてアルミニウムのラミネートフィルムで封止することで、225mAhの容量を持つ試験電池を作製した。4つの試験電池をドローンに搭載し、1〜1.5mの高さで安定して飛行させることに成功している。

従来の積層型電極(a)と今回の研究で開発した同心円型電極(b)の比較
従来の積層型電極(a)と今回の研究で開発した同心円型電極(b)の比較[クリックで拡大] 出所:豊田中央研究所

【訂正】初出時に、両画像に記載の文章に誤りがございました。お詫びして訂正致します。

ファイバー電池開発の背景

 繰り返し充放電できるリチウムイオン二次電池に求められる性能は、エネルギー密度、急速充放電、サイクル寿命、安全性など多岐にわたる。特にドローンやスマートデバイスに用いる小型電池では、それらの性能に加えて小型かつ軽量であることも必要となる。

 こうした複数の性能はトレードオフの関係にある。例えば、従来のリチウムイオン二次電池はシート状の2枚の電極(正極と負極)で電解質を挟んだ積層型の構造をしており、電極を厚くすることでエネルギー密度を高くできる。

 一方で、厚い電極内ではリチウムイオンが移動しにくくなるため、急速充放電が妨げられる。高性能なリチウムイオン二次電池を開発するには、こうした性能のトレードオフを制御することが必須であり、この課題の解消に向けて世界中で盛んに研究が行われている。

 豊田中央研究所の研究チームは従来のリチウムイオン二次電池が抱えている課題の解決を目指し、さまざまなアプローチで研究を進めていた。そして、ファイバー電池の開発に至った。

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