使わなければ話にならない「接触要素」(その2):CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる(13)(2/4 ページ)
金属疲労を起こした際にかかる対策コストは膨大なものになる。連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」では、CAEを正しく使いこなし、その解析結果から疲労破壊の有無を予測するアプローチを解説する。連載第13回は、前回に引き続き「接触要素」について取り上げる。
接触解析機能の比較
では、CAE解析ソフトが接触問題で実務に耐えられるかどうかを調べる方法を紹介します。ここで使ったソフトは「3D CADソフトF」「3D CADソフトS」、そして「ANSYS」です。では、接触解析“意地悪テスト”を始めます。
図6に、垂直荷重が作用するL金具およびボルトの解析モデルと境界条件を示します。ベースとL金具はボルトを介して結合されているので、計算は収束するはずです。
図7に解析結果を示します。無事解析ができました。
次は、水平荷重です。図2に示した力のつり合いにおいて、壁面の摩擦力が荷重Wを上回っていないとブラケットがずれ落ちました。荷重と摩擦力が拮抗するような解析条件としましょう。荷重状態を図8に示します。水平方向荷重(1500[N])より摩擦力が大きいとL金具はずれませんね。摩擦力はボルト軸力によって発生させます。ボルトの軸力はボルト端面の強制変位で表現します。
図9に、解析結果を示します。3D CAD Fの変位が30364[mm]となりました。摩擦面が滑っており、摩擦力の発生がシミュレートできなかったようです。図8のような解析は日常的に行われるので少し残念です。
ボルトの頭のところの変位図を図10に示します。ボルトがL金具を「ギューッ」と押し付けていて、かつ接触面に隙間ができていることが確認できます。
3D CAD Fの名誉回復のために、非線形解析であることを明示的に設定して解析しました。3D CAD Fはサブスクリプション契約で使っていますが、非線形解析の荷重ステップを細かくするには課金しなければなりません。その結果を図11に示します。無事解析できました。
接触解析機能の比較:まとめ
これまで解析した結果を表1にまとめます。日常の業務では「L金具 水平荷重」までできれば問題ないと思います。
ここでの目的は、3D CAD Fや3D CAD Sの性能を評価することではなく、読者の皆さんが普段自社で使っているCAEソフトの接触要素解析機能のテスト方法を紹介することです。「L金具 水平荷重」は調べておいた方がよいと考えております。また、非線形解析のための設定値はソフトのデフォルト値です。×とした解析結果は、設定値を見直すことで解析できるようになる可能性があります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.