首里城の再建に直接関わりたい 漆器職人を志す学生の決意:ワクワクを原動力に! ものづくりなヒト探訪記(17)(3/3 ページ)
本連載では、新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。第17回では前回に続き京都伝統工芸大学校を取材しました。今回は、首里城の火災をきっかけに漆工芸の世界へ進むことを決めた、松堂沙耶さんに話を聞きました。
沖縄の文化や風習から着想を得たモノづくり
――作品「サン」に込めたこだわりを教えてください。
松堂さん 作品は、サンという沖縄のお守りがモチーフになっています。ススキを結んだもので、魔除けとして家の玄関口や門に置くことが多いです。今回は、芸術作品として飾るだけではなく、何らかの機能も持たせたかったので中に物を入れられる箱にしました。
――沖縄の魔除けといえばシーサーが有名ですが、サンについては今回初めて知りました。今日お話を伺って、沖縄のことを前より少しだけ学べた気がします。卒業後は沖縄で暮らす予定なのですか?
松堂さん はい。幼い頃から沖縄で生まれ育ち、両親から沖縄独自の文化やモノづくりを身近に感じられる環境で育ててもらいました。これからも沖縄の文化を知るきっかけになるような作品を作っていきたいし、「首里城の再建に携わりたい」という目標もかなえられるように頑張ります。
編集後記
漆を学び、作品を生み出すには、日々価格が高騰する材料や道具を自費でそろえる必要があることに加え、漆によって肌がかぶれる「漆かぶれ」も乗り越えなければならない障壁だと感じました。
漆を扱う部屋では漆の飛沫が空気中を舞っていたり、床やドアにも付着している可能性があったりと、漆専攻の学生は日々、漆かぶれと戦いながら学校に通っているそうです。症状の重さは人それぞれではあるものの、苦しい思いをしながら制作をしている生の声を聞いて、漆器の貴重さや、その作り手を目指す彼らの強い決意を感じました。
数年前に行われた首里城の塗り替え作業には、2年以上もかかったのだとか。首里城が再建され、生まれ変わる頃、ぜひ沖縄を訪れたいと思います。
(ものづくり新聞記者 佐藤日向子)
著者紹介
ものづくり新聞
Webサイト:https://www.makingthingsnews.com/
note:https://monojirei.publica-inc.com/
「あらゆる人がものづくりを通して好奇心と喜びでワクワクし続ける社会の実現」をビジョンに、ものづくりの現場とつながり、それぞれの人の想いを世界に発信することで共感し新たな価値を生み出すきっかけをつくりだすWebメディアです。
2023年現在、160本以上のインタビュー記事を発信し、町工場の製品開発ストーリー、産業観光イベントレポート、ものづくり女子特集、ものづくりと日本の歴史コラムといった独自の切り口の記事を発表しています。
編集長
伊藤宗寿
製造業向けコンサルティング(DX改革、IT化、PLM/PDM導入支援、経営支援)のかたわら、日本と世界の製造業を盛り上げるためにものづくり新聞を立ち上げた。クラフトビール好き。
記者
中野涼奈
新卒で金型メーカーに入社し、金属部品の磨き工程と測定工程を担当。2020年からものづくり新聞記者として活動。
佐藤日向子
スウェーデンの大学で学士課程を修了。輸入貿易会社、ブランディングコンサルティング会社、日本菓子販売の米国ベンチャーなどを経て、2023年からものづくり新聞にジョイン。
木戸一幸
フリーライターとして25年活動。150冊以上の書籍に携わる。2022年よりものづくり新聞の記事校正を担当。専門分野はゲームであるが、かつては劇団の脚本を担当するなど、ジャンルにとらわれない書き手を目指している。
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