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首里城の再建に直接関わりたい 漆器職人を志す学生の決意ワクワクを原動力に! ものづくりなヒト探訪記(17)(1/3 ページ)

本連載では、新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。第17回では前回に続き京都伝統工芸大学校を取材しました。今回は、首里城の火災をきっかけに漆工芸の世界へ進むことを決めた、松堂沙耶さんに話を聞きました。

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MONOist編集部より

本連載はパブリカが運営するWebメディア「ものづくり新聞」に掲載された記事を、一部編集した上で転載するものです。

ものづくり新聞は全国の中小製造業で働く人に注目し、その魅力を発信する記事を制作しています。本連載では、中小製造業の“いま”を紹介していきます。


京都伝統工芸大学校 漆専攻4年(取材当時)の松堂沙耶さん
京都伝統工芸大学校 漆専攻4年(取材当時)の松堂沙耶さん 出所:ものづくり新聞

 前回に続き、伝統工芸に関する技や知識を学べる京都府南丹市の京都伝統工芸大学校を取材しました。今回お話を伺ったのは、漆専攻4年(取材当時)の松堂沙耶(まつどう さや)さんです。

 松堂さんは沖縄県うるま市出身で、幼い頃から沖縄の文化や風習、土着のモノづくりなどに触れる機会の多い環境で育ちました。2023年度の修了制作では沖縄のお守りをモチーフにした漆芸作品「サン」を制作。この作品は、卒業修了制作の選抜作品による「清水寺作品展2024」でも展示されました。松堂さんに、作品を制作した背景や、京都伝統工芸大学校で漆専攻を選んだ理由などについて聞きました。

沖縄生まれ沖縄育ち 首里城の火災がきっかけで漆の世界へ

地元、沖縄県うるま市で松堂さんが撮影
地元、沖縄県うるま市で松堂さんが撮影[クリックして拡大] 出所:松堂沙耶さん

――松堂さんは沖縄出身とお聞きしました。どのようなきっかけで京都で漆を学びたいと思うようになったのですか?

松堂さん 2019年に火災で焼失した、沖縄県那覇市の世界遺産「首里城」の再建に携わりたいとの思いからです。もともと、広い視野を持つために県外の大学へ進学したいと考えていたこともあり、両親と一緒に調べて見つけたのが、京都伝統工芸大学校でした。

 オープンキャンパスに来るまでは、金閣寺などがあるいかにも京都らしいエリアを想像していました。実際にキャンパスを訪れてみると、山に囲まれた環境で驚きました。両親とも相談し、落ち着いたこの場所でなら4年間しっかり勉強ができると判断し、ここに決めました。

首里城の再建について

首里城正殿の復元工事は2022年11月に着工し、2024年6月に上棟。その後、瓦葺(ぶ)きや漆塗装などの作業を経て、2026年度の完成を目指しています。

参考:首里城公園Webサイト

松堂さん
モノづくりへの思いを語る松堂さん 出所:ものづくり新聞

――さまざまな専攻がある中で、漆を選ばれたのはなぜですか?

松堂さん 先ほどお話したように、この学校を選んだのは、首里城の再建に携わりたいという思いからです。再建にどのような形で関わりたいかを考え、漆工芸に興味があること、手を動かしてモノを作ることが好きなこと、自分の手で直接首里城の再建に貢献できることなどから、漆の分野を選びました。

 また、漆業界の実情を知ったことも、漆専攻を選ぶきっかけになりました。首里城は全体に漆が塗られていて「巨大な琉球漆器」と例えられることもあります。再建のためには漆職人の技術が必要ですが、現在は職人や後継者が不足し、職人育成の機会も少ないことが問題となっているそうです。

 実際にオープンキャンパスで漆工芸を体験をしたり、在校生の先輩とお話したりしたことで、入学後のイメージも湧きました。加飾だけでなく漆にまつわることをより幅広く学ぶために、漆専攻に進学することを決めました。

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