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イチから全部作ってみよう(12)要求仕様書の異常系を階層構造を使って洗い出す山浦恒央の“くみこみ”な話(181)(3/3 ページ)

ECサイトを題材にソフトウェア開発の全工程を学ぶ新シリーズ「イチから全部作ってみよう」がスタート。シリーズ第12回は、これまでに作成したたこ焼き屋模擬店の要求仕様書における異常系の洗い出しを行う。

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7.異常系の洗い出し結果

7.1 大項目

 洗い出した結果を大きな項目として図2に示します。

図2
図2 大項目で洗い出した異常系

 筆者は、運営、販売、製造、会計、外部要因の5つに分割して異常系を考えることとしました。

7.2 詳細

 大項目の中の詳細な異常系をまとめた結果を図3に示します。

図3
図3 たこ焼き模擬店の異常系の考察結果[クリックで拡大]

 上記では、例えば、「不良品を作った場合」「火傷をする」といった場合も考察しています。実際の「たこ焼き模擬店」の運営では、「異常系は、あらかじめ対処法は決めず、実際に発生してから、常識と良識で臨機応変に(あるいは、テキトーに)対応する」ことになるでしょう。

 正常ケースでも、日常生活では、毎日、毎時、毎分、細かい判断をしています。朝起きて学校へ行くまで「目覚まし時計が鳴って、あと1分だけ寝ていようか?」「どのシャツを着ようか?」「歯磨きは十分か?」「髪形は見苦しくないか?」「バスの時間が迫っているので、走ろうか?」「前から来る歩行者を右に避けるか、左に避けるか?」「この地下鉄の車両は満員なので、隣の車両から乗ろうか?」など、無意識のうちに大量の判断をしています。プログラミングでは、この全ての判断を考慮しなければなりません。異常が発生した場合も同様です。そう考えると、朝、起床して学校へ行くのは、簡単に思えますが、実は、おびただしい数の判断を下しているのです。

 文化祭での模擬店とはいえ、さまざまな異常系を考える必要がありますね。具体的な対応策は、次回以降で検討します。

8.おわりに

 今回は、異常系を考察する上でのポイントと、たこ焼き模擬店を題材として、もう一歩進めた異常系を洗い出しました。

 異常系を考えるとキリがありませんが、コンピュータは、プログラミングした通りにしか動作せず、臨機応変に動作しません。今回は、階層構造で異常系を洗い出す方法を紹介しました。たかが文化祭の模擬店とはいえ、学生さんは、想定外の事象に直面しても、臨機応変に対応していて素晴らしいと思います。

 なお、階層構造で異常系を考える方法は、FTA(Fault Tree Analysis)でも応用しているので、興味がある人は調べてもよいでしょう。

 次回は、洗い出した異常系を分析し、対策するか/諦めるかを考察します。

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【 筆者紹介 】
山浦 恒央(やまうら つねお)

東海大学 大学院 組込み技術研究科 非常勤講師(工学博士)


1977年、日立ソフトウェアエンジニアリングに入社、2006年より、東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科助教授、2007年より、同大学大学院組込み技術研究科准教授、2016年より非常勤講師。

主な著書・訳書は、「Advances in Computers」 (Academic Press社、共著)、「ピープルウエア 第2版」「ソフトウェアテスト技法」「実践的プログラムテスト入門」「デスマーチ 第2版」「ソフトウエア開発プロフェッショナル」(以上、日経BP社、共訳)、「ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ」「初めて学ぶソフトウエアメトリクス」(以上、日経BP社、翻訳)。


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