火力発電向け液体アンモニア用ポンプ性能試験に成功:脱炭素
日機装は、モーター容量が132kWの液体アンモニア用ポンプで、液体アンモニアと液温が近い液化石油ガス(LPG)を送液するLPG性能試験に成功した。
日機装は2024年9月9日、モーター容量が132kWの液体アンモニア用ポンプで、液体アンモニア(−33℃)と液温が近い−42℃の液化石油ガス(LPG)を送液するLPG性能試験に成功し、設計値通りの性能を確認したと発表した。このポンプは、液体アンモニアを外部に漏らさないサブマージド構造(ポンプとモーターを液中に沈めた構造)で、腐食性のあるアンモニアからモータを保護するためキャンドモーターを採用している。
キャンドモーターを使ったサブマージド構造のアンモニアポンプとしては、世界最大級のポンプによる試験成功となる(同社調べ)。このポンプは、燃料の一部にアンモニアを混ぜて使う火力発電所の貯蔵タンクに設置し、ボイラ設備に送液する用途に適した規模だ。
LPG性能試験実施の概要背景
日機装は既に、液体アンモニア用キャンドモータポンプの技術を確立し、商業化している他、アンモニア冷媒冷凍機向けなどに世界で数千台を納入した実績がある。駆動部のモーターとポンプが分離している通常のポンプは、接続部から液漏れが発生するが、モーターがポンプ内に組み込まれているキャンドモーターポンプは、接続部が無いため液漏れしない。ポンプ内部に組み込んだモーターは、腐食性がある液体アンモニアに触れて劣化することを防ぐため、液体の流路から隔離した構造となっています。
一方、脱炭素社会の実現に向けて、液体アンモニアは発電燃料や水素キャリアとしての用途が期待されている。特に、火力発電所やアンモニア基地におけるアンモニア貯蔵タンクでの利用では、従来より大規模な移送が必要とされるため、ポンプの大型化が求められている。
そのため、日機装は液化天然ガス(LNG)基地などでの大量移送に使うクライオジェニックポンプの技術を取り入れて大型化を図り、液体アンモニア用ポンプを開発した。クライオジェニックポンプで採用しているサブマージド構造により、液体アンモニアのタンク外部への漏えいを防ぐこともできる。
今回のLPG性能試験では、キャンドモーターを使ったサブマージド構造の液体アンモニアポンプとしては大きいモータ容量132kWで、LPGの送液に成功した。
LPG性能試験の概要
LPG性能試験は、−33℃の液体アンモニアと温度帯が近似している−42℃のLPGを使って実施する性能試験だ。ポンプは−33℃の液体アンモニアに触れると冷却されて、それぞれの金属部品が収縮するなどの影響を受ける。今回は、より実機に近い形状/腐食対策を施したポンプで、液体アンモニアでの運転環境に近い状態で試験を行ったことにより、実際の運転時に近似したデータを取得でき、液体特性に対するポンプの健全性を確認できた。
なお、今回のLPG性能試験を実施したのは、宮崎日機装(宮崎市)にあるクライオジェニックポンプ試験設備だ。実際のLNGやLPGを使って性能試験を行い、(極)低温の液体がポンプに与える影響などを確認することができる。
今後の展開
国内では、早ければ2027年度にも火力発電所で20%のアンモニアを混ぜた商業運転をする計画があり、日機装は2026年にも火力発電向け液体アンモニア用ポンプを市場投入する計画だ。また、ポンプの大型化を図り、混焼率引き上げへの対応や、アンモニア基地の強化コンクリートタンク用途への展開を進める。
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