事業を上下水平どちらに伸ばすべきか 製造業のバリューチェーン分析の考え方:間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(17)(3/3 ページ)
コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第17回のテーマは「バリューチェーン分析から事業を成長させる手法」だ。
上級編:ターゲットを変える
バリューチェーンから、新たなターゲットを想定し自社の価値提供ができそうなポイントを探る方法だ。2つの例を紹介する。
(1)樹脂金型の設計製作会社
樹脂金型の設計製作は、上記のバリューチェーン図では試作の次のフェーズに位置付けられる。新規の案件を獲得するためには、より上流の試作段階、もしくは成形業者からの案件獲得が必要だが、それでは以前から行ってきたやり方と同じだ。
この企業では、新たなターゲットとして、既に成形サービスを提供した企業の修理メンテナンスに着目することにした。手間と技術が必要になるが、他社型も含めた金型の修理、メンテナンス対応を訴求することで、顧客接点を作り出し、新規金型の相談を受ける流れを作り出した。
(2)冷間圧造品の2次加工の会社
冷間圧造の2次加工を行っていた会社が、ネジ、リベットの製造会社としてPRすることで、新たな案件を獲得した事例だ。バリューチェーンを読み解くことで取り組みの全容が理解できる。
冷間圧造会社から仕事を受けていた業態から、メーカーから直接ネジ・リベットの仕事を受け、協力会社として冷間圧造会社に依頼をし、最終加工を自社で行う流れに転換している。
量産は冷間圧造、少・中量ボリュームは切削の協力工場を活用することで、ネジ・リベットのカスタム品の試作から量産まで最適な工法で提供するという価値を生み出している。
新しい価値を実現するための2つのポイント
バリューチェーン分析から新たな価値を定義した後に必要となる2つのポイントについて説明する。
提供体制の構築方法を考える
新しい提供価値を定義したとして、その提供価値をどう実現させるかが次の考えるべきポイントとなる。
自社内で提供できるものなのか、現体制で不足しているものはないか、不足しているものがあるならばどう補っていくかを検討していく。社内で新しく設備の導入や新技術の習得をするには時間、労力、コストもかかるため、外部パートナーも含めて検討することが望ましい。外部パートナーとの円滑な連携ができるかどうかが成功のカギとなる。
テストマーケティングのためにWebを活用する
事業内容を急に変更することはできない、「深化」と「探索」のどちらも重要といわれているように、既存事業をより深く掘り下げサービス価値を高めつつ、新しい提供価値を探索するという同時進行が必要となる。
そのために有用なツールとして冒頭でも説明したようにWebマーケティングが重要となる。テストマーケティング的な取り組みでPRを行い、ユーザーからの問い合わせや相談を呼び込む中で新たな提供価値を探る。場合によっては別サイトを1つ設け、新事業単独でPRを行うことも有効だ。
以上のように、バリューチェーン分析をもとに事業成長の戦略を立て、実行することで、受託加工業の付加価値を高め、競争力を強化できる。マーケティング施策を通じて市場のニーズを把握し、新しい提供価値を創出することが、今後の事業成長に不可欠だ。
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筆者紹介
小林正道
テクノポート株式会社 取締役
製造業のWebマーケティング支援を15年以上行っている。製造業への訪問実績は2000社を超える。幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規開拓営業の支援を行う。
『マーケティングスキル×Webスキル(SEO中心)×製造業に関する深い知識』
この3つのスキルを組み合わせることで独自の専門領域を作り、卓越した力を発揮する。
日本工業大学技術経営学修士(MOT)2023/3卒業。
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