インテルの新たなフラグシップ「Lunar Lake」、次世代AI PCに向け大胆な設計変更:組み込み開発ニュース(2/3 ページ)
インテルは、2024年第3四半期の市場投入が予定されているクライアント向けプロセッサの新製品「Lunar Lake」(開発コード名)の技術詳細について説明した。
P-Coreのハイパースレッディングを廃止
このようにパッケージそのものの大幅な設計変更を行ったLunar Lakeだが、マイクロアーキテクチャについてもMeteor Lakeから大きく進化させている。「x86の電力効率を極める」(安生氏)ことにより、プロセッサ全体での消費電力を最大40%削減するとともに、シングルスレッドの消費電力も半減した。Meteor Lakeから採用しているGPUのArcのグラフィックス処理性能も1.5倍とし、同じくMeteor Lakeで初採用したAI推論処理に最適な専用のNPU(Neural Processing Unit)の処理性能も大幅に高めている。
インテルのプロセッサ製品のCPUアーキテクチャは、高性能の「Performance Core(P-Core)」と高効率の「Efficient Core(E-Core)」を組み合わせるハイブリッド戦略をとっている。Lunar Lakeでは、P-Coreの全面的な刷新が大きな特徴になる。
今回Lunar LakeのP-Coreとして採用した「Lion Cove」(開発コード名)は、面積/電力当たりの性能を示すPPA(Power、Performance、Area)を重視して開発された。“全面的な刷新”というのは、2000年代から長らく採用してきたハイパースレッディングの廃止である。安生氏は「PPAを最大化するためのものだ。ハイパースレッディングが効果を発揮してきたマルチスレッド処理については、E-Coreの性能向上によって十分対応できる」と説明する。
この他、クロック間隔を従来の100MHzから16.67MHzに細分化するとともに、実行ポートの数を12から18に増やし、アウトオブオーダー実行エンジンでベクトル処理と固定小数点処理を分離するなどの工夫を盛り込んだ。さらに、L1/L2キャッシュよりもCPUに近い位置にL0キャッシュを設けることでメモリサブシステムの強化も図っている。L0キャッシュにはキャッシュのミスフィットを改善する狙いがある。
P-Coreの性能は、Meteor Lakeの「Redwood Cove」(開発コード名)と比べて14%向上しており、消費電力当たりの性能も10〜18%の向上を果たしているという。
一方のE-Coreで採用した「Skymont」(開発コード名)は、Meteor Lakeの「Cresmont」(開発コード名)で通常と低消費電力の2種類に分かれていたアーキテクチャを一つにまとめる狙いがある。Lion Coveほどの大きな変更は行われていないが、分岐予測の強化や、キュー深度を高めることによる並列処理の強化、ディスパッチポートの16から26の増加、L2キャッシュの帯域幅の倍増など、P-Coreにおけるハイパースレッディングの廃止をカバーする形でマルチスレッド処理に関わる性能向上が図られている。
低消費電力版Cresmontとの比較では、シングルスレッドの浮動小数点演算処理性能が68%増となっている。また、Skymont4コアと低消費電力版Cresmont2コアの固定小数点演算のマルチスレッド処理比較では、同じ性能を3分の1の消費電力で実現可能であり、同じ消費電力であれば性能は2.9倍、最大性能は4倍を発揮できるなど、コア数が違うもののその差を超えて性能向上を実現できていることが示された。
さらに、第12世代Coreプロセッサの「Alder Lake」(開発コード名)から導入している、ワークロードをCPUコアのマッチングを最適化する「スレッド・ディレクター」についても改善を図る方針だ。新たに導入する最適化ギアとなる「Dynamic Tuning Technology」により、「もっと賢くスレッド管理をできるようになる。PCメーカーが開発する製品に合わせて調整できるようになるだろう」(安生氏)という。
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