電池の実験と試験、そして評価……そのプロセスに正しい理解を:今こそ知りたい電池のあれこれ(25)(2/3 ページ)
今回はいま一度初心に立ち返り、主に電池の評価を例にして、「実験」「試験」「評価」、それぞれの意味や目的、重要性について解説していきたいと思います。
くぎ刺し試験本来の主目的は「外部衝撃」ではない
例えば、電池の安全性を評価する試験手法の代表例として知られるものの1つに「くぎ刺し試験」があります。電池に直接くぎを突き刺すという視覚的な分かりやすさから、しばしば電池の安全性の裏付けとして用いられることの多い試験ではありますが、その一方で再現性をとることが難しく、同じ電池であってもくぎの刺し方によって異なる発火挙動が見られることもあり、試験規格の多くには採用されていない試験でもあります。
また、「くぎ刺し」という外的な要因で電池を破壊することから、外部衝撃を主に想定した試験手法であると思われがちですが、くぎ刺し試験本来の主目的は「外部衝撃」ではなく「金属析出」や「コンタミ」による「内部短絡」であることには注意が必要です。
リチウムイオン電池の異常発熱要因である「内部短絡」の影響を評価するため、JIS規格などで定められている試験手法が「強制内部短絡」です。これは、ニッケル小片を電池内部に意図的に混入させ、軽くプレスすることで、強制的に内部短絡を引き起こすという手法です。
この「強制内部短絡」は意図的に電池内部に金属片を混入させる試験手法であるため、電池の製造や分解に慣れた作業者でなければ実施が困難です。一方、くぎ刺し試験であれば、電池内部に直接手を加えることなく、外的な要因のみで内部短絡の状態を引き起こすことができます。ただし、本来の「強制内部短絡」試験とは状態が異なるものであり、あくまでも簡易的に強制内部短絡試験を模擬したものであるということを認識した上で、「試験」や「評価」に取り組むことが必要となってきます。
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