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日本の製造業が世界市場で勝ち抜くためには何が必要なのか製造業DXプロセス別解説(12)(2/3 ページ)

製造業のバリューチェーンを10のプロセスに分け、DXを進める上で起こりがちな課題と解決へのアプローチを紹介する本連載。最終回となる第12回は、製造業DXやその先を目指す日本企業に向けたメッセージとして、世界市場で勝ち抜くために何が必要なのかを論じる。

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デジタルツインとAIを巡る課題と可能性

 品質のコントロールを実践する上で、デジタルツインは大きな助けだ。IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)などの技術を駆使して工場の稼働状況をバーチャル世界に投影する。リアルとバーチャルでほぼ同じ現象が起きていると想定できれば、バーチャル世界の時間を早回しして明日、来週の設備のトラブル予測が可能になる。また、さまざまなシミュレーションにより、製品の品質を細かく制御することもできるだろう。

 ただ、多くの日本メーカーはデジタルツインにあまり積極的ではないようだ。特に、本丸ともいえる設計/製造プロセスのデジタルツインに取り組んでいる企業は限定的だ。設計データや製品レシピをデジタル化し、リアルタイムモニタリングやシミュレーションができる状態をつくるのは、ハードルが高いと感じている企業が多いようだ。

 まずは、一部の製造ラインにデジタルツインを実装してみてはどうだろうか。既存のラインで試すか、新設のラインに導入するかは一つの論点だが、導入のために既存ラインを停止する可能性などを考えれば、後者の方が比較的容易かもしれない。

 デジタルツインの有無、その仕組みづくりの巧拙は、製造業の将来の競争力を左右するだろう。デジタルツインがあれば、特定の設備の設定を変えたとき品質がどう変化するのか、よくなるのか悪化するのかをバーチャル環境でシミュレーションすることができる。コストと品質のバランスを最適化する上でも、極めて重要なシステムである。

リインベンターズ(再創造企業)への道

 アクセンチュアでは「企業全体の再創造(Total Enterprise Reinvention、略称TER)」という考えを提唱している。多くの企業がDXに取り組んでいるが、大きな成果を得るためには、一部の業務のデジタル化、部分最適化では不十分だ。企業体そのもの、組織全体をデジタルで変革し、全体最適の目線で継続的に再創造する必要がある。

 日本を含む世界10カ国/1500人以上の経営幹部に対する調査の結果、企業全体の再創造を推進するリインベンターズ(再創造企業)は8%。一部の事業領域の変革を推進するトランスフォーマーズ(変革途中企業)は86%、限られた範囲と目標の中での機能的な変革にとどまるオプティマイザーズ(部分最適企業)が6%だった(図2)。

図2
図2 企業全体の再創造に向けた取り組み状況[クリックで拡大] 出所:アクセンチュア

 おそらく、日本企業の多くもトランスフォーマーズに分類されるだろう。トランスフォーマーズも方向としては企業全体の変革を目指しているはずだが、研究開発やサプライチェーン、バックオフィスなど分野ごとのDXにとどまっている。一方、リインベンターズは各分野での変革を有機的につないで相乗効果を実現している。それにより、他のグループに比べて財務的にも高い成果を残している。

 では、日本企業がリインベンターズとなるには何が必要だろうか――。多くの日本企業と接する中で、筆者が感じているのは“ベンチマーク好き”ともいえる性向だ。レーダーチャートを作って競合製品と比較し、劣位の項目の強化に注力するといったやり方である。

 全項目の平均点向上を図るというアプローチは、本当に有効だろうか。世界を見れば、劣位の項目は捨て、とがった部分にこだわって競合を圧倒しようとするイノベーターが多いように見える。日本の製造業は自社製品の強化すべきポイント、捨ててもよい要素を改めて考えてみてはどうだろうか。

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