「誰もが熟練設計者と同じように設計できる」ための標準化:3D設計の未来(11)(2/3 ページ)
機械設計に携わるようになってから30年超、3D CADとの付き合いも20年以上になる筆者が、毎回さまざまな切り口で「3D設計の未来」に関する話題をコラム形式で発信する。第11回は「『誰もが熟練設計者と同じように設計できる』ための標準化」をテーマに取り上げる。
熟練設計者とは
技能と技術はどちらも重要です。成功体験や失敗体験という経験によって培われた技能はとても重要ですし、専門的な知識によって裏付けされた技術も重要です。
本来はこの両方を持ち合わせていることがベストなのでしょうが、筆者の経験上、熟練設計者はどちらかというと技能に優れた方々が多いという印象です。
これから求められる設計開発環境と設計者
現在、社会課題として人材不足が深刻化しており、特に中小企業ではここ数年、採用活動も厳しい状況が続いています。今後、労働人口が増えることも現実として考えられませんので、社会全体として人材不足は続いていくのでしょう。前回紹介した2025年問題に直面しようとしている今、大企業でさえも技能継承や技術継承の課題に直面しています。中小企業も大企業も人材が不足する中、どのようにして技術レベルを維持、向上させていくかが重要課題となっています。
そのような状況において、今、設計者自身に求められているのは“即戦力である”ことです。海外企業の台頭は著しいものがあります。特に、中国ではいち早く製品を市場に投入し、その利用者からの意見をすぐさま製品にフィードバックして、性能や顧客満足度を上げながら、製品の完成度を高めていくという手法を得意とし、年々その存在感を増しています。
スタートアップの視点でいえば、日本でも新興企業がいくつも誕生していますが、その数やスピードは米国や中国、インドなどには及ばず、海外から発信される新製品やイノベーションが目立ちます。こうした勢いは、日本の中小企業だけでなく、大企業にとっても脅威であり、スピード感をもって製品開発を行っていくためにも、即戦力の人材が求められるのです。また同時に、日本企業そのものも、これまでの「橋をたたいて渡る」スタイル(体質)から脱却し、考え方をシフトできるかどうかが問われています。
即戦力が必要だといっても、誰もが熟練設計者と同じように設計できるわけではありません。そのため、設計開発環境には、設計者の技能と技術を育てる仕組みが求められます。ここで重要となるのがデジタルの活用であり、デジタルを駆使するための標準化が不可欠となります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.