SCM改革はなにより戦略構築の明確化から 業務改善の前に検討すべき5つの要素:新時代のサプライチェーンマネジメント戦略(2)(3/4 ページ)
さまざまな企業課題に対応すべく、サプライチェーンマネジメント(SCM)のカバー領域や求められる機能も変化している。本連載では、経営の意思を反映したSCMを実現する大方針たる「SCM戦略」と、それを企画/推進する「SCM戦略組織」、これらを支える「SCM人材」の要件とその育成の在り方を提案する。
(2)パートナー戦略
「パートナー戦略」を一言でいえば、「どのような場合自社で製造し、どのような場合は外注に任せるのか」の大方針を明らかにすることだ。具体的には、自社工場で製造ノウハウを蓄積しつつ生産を続けるのか、それとも極力自社資産としての生産拠点を持たず、積極的に委託生産に切り替えていくのかを、製品ライフサイクルとの関係性と共に整理する(図4)。
これにより、サプライチェーンのどこからどこまでを自社が担い、どこから他社に委ねていくのかが明確になり、中長期的なサプライチェーンの在り方を検討していく上での「議論の土台」を固めることができる。但し、本戦略は技術部門や調達部門の所掌範囲と重なる部分が大きいため、これらの部署と調整の上で具体化しておくことが望ましい。
(3)サービスレベル
「サービスレベル」とは、顧客の出荷要求にどれだけの確率で対応できるようにするかを数値目標化したものだ。一般に、顧客の納期要求は供給側の事情とはお構いなしだ。それでも顧客が発注から納入までどの程度の期間を期待するのか、自社の販売計画に対しどの程度の上振れが生じそうかを予測し、適切に在庫を構えておくことができれば、納期順守率は高まり顧客満足度を高めることができる(逆に、顧客満足を一切無視すれば在庫は不要である)。
一方、顧客の要求に100%対応しようとすれば、在庫は限りなく大きくなってしまい、資産効率が大きく悪化する。また、経営管理上の棚卸在庫は少ないほど望ましいため、財務部門は在庫過多に陥りがちなSCMの現場に対し、極端な在庫のスリム化を要求する傾向にある。
そこで、「サービスレベル」という数値目標(本来顧客ごとに異なるが、ここでは事業全体の標準としての目標水準を指す)を定義することで、顧客満足と、財務管理上望ましい(許容できる)在庫水準のバランスを、このサービスレベル調整を通じて合意〜コントロールすることができる。
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