SCM改革はなにより戦略構築の明確化から 業務改善の前に検討すべき5つの要素:新時代のサプライチェーンマネジメント戦略(2)(2/4 ページ)
さまざまな企業課題に対応すべく、サプライチェーンマネジメント(SCM)のカバー領域や求められる機能も変化している。本連載では、経営の意思を反映したSCMを実現する大方針たる「SCM戦略」と、それを企画/推進する「SCM戦略組織」、これらを支える「SCM人材」の要件とその育成の在り方を提案する。
SCM戦略で定義される5つの戦略要素
「SCM戦略」として企業が方向付けるべき要素は、各企業のビジネスモデルや組織構造、責任/権限設計によって違いはあるが、図2に示す通り「SCMポリシー」「パートナー戦略」「サービスレベル」「サプライチェーンリスクマネジメント」「サプライチェーンネットワークデザイン」の5つにまとめられる(図2)。
(1)SCMポリシー
「SCMポリシー」は、企業(または事業)が、競合他社との競争戦略を実現する上で、SCMにどのような役割を期待するのかを端的に表現したものだ。競争戦略上の重要条件は業界/業態によって異なり、そこで求められるSCMの役割や機能も当然違ったものになる。
例えば、自動車向けなどの需要見通しは早期に明らかになるが、かわりに納期順守徹底が求められる。こうした「納期優先型」や、価格競争力を握るため、全てのコストを極限まで絞る「コスト重視型」、納期に融通は利くが、顧客ごとのカスタム品が求められる「多品種少量型」などがある。
そして当然ながら、それらポリシーを実現するためのSCMの業務プロセスやルールは、その役割を実現するため、それぞれ異なるものになる。SCMポリシーさえ組織内で合意できれば、個々の業務プロセスやルールはそれに準じておおむね決定できる(図3)。逆に言えば、ポリシーを明確にしないまま定義〜改善を繰り返した業務プロセスやルールは、部分最適の集合体となり、競争戦略を支えるべきSCMとしての役割を担うことができない。
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