つながるだけでは不十分? 革新的な価値を生む「いいIoT」とは:結果を出す製造DX〜人を育ててモノの流れを改革する〜(5)(1/2 ページ)
モノづくりDXの重要性が叫ばれて久しいが、満足いく結果を出せた企業は多くない。本連載ではモノの流れに着目し、「現場力を高めるDX」実現に必要なプロセスを解説していく。第5回はIoTの中でも「オンプレIoT」と「デジタルネイティブIoT」の違いを解説したい。
これまで4回にわたり、DX(デジタルトランスフォーメーション)によくある誤解や、失敗にいざなうワナ、その逆の成功要因について話した。今回はDXの重要な要素であるIoT(モノのインターネット)について深掘りしたい。これは「デジタルネイティブのモノづくり」にもつながる話でもある。
現在、あらゆる業界でモノをクラウドに接続する動きが加速している。IT業界でいえば、かつて主流だったオンプレサーバからクラウドサービスへと需要は置き変わっている。電機業界では、ヘッドフォンステレオやテレビなどでコンテンツを楽しんでいた時代から、スマートフォンなど多様なデバイスで音楽ストリーミングと動画ストリーミングを味わう時代に変わった。
製造業でも、工場のIoT化やクラウド化が進んでいる。ドイツなどでは日本よりも「デジタルツイン」の試みが進んでいる。製品の在り方自体にもこれらの流れが大きく影響している。モノづくりの主幹産業の1つである自動車業界では、テスラの自動車製品が「走るスマホ」と称されていることが有名だが、まさしくこれは、こうした流れを背景として誕生したものだろう。
ハードウェアがインターネットにつながるIoT化、ネットワーク上でデータ共有するクラウド化は、止められない変化であるように思える。一方で、筆者は日本企業がこの変化に乗り遅れてきたことに対して、深い悲しみを感じている。日本がIoT化やクラウド化の変化に対応するには、どうすればよいのか。
いいIoTとは?
当社は「スマートマットクラウド」というIoTサービスの企画、開発、製造を行っているが、その過程で「真の意味での変革につながるような『いいIoT』とは何か?」と自問自答を繰り返してきた。ハードウェアがインターネットにつながっている状態は、確かにIoTが実現された状態といえる。だが、つながっていれば何でも革新的なIoTだといってよいのだろうか。
筆者は、それは違うと考えている。結論から言えば、「いいIoT」とは「デジタルネイティブIoT」のことに他ならないと確信している。
IoTシステムは組み込みソフトウェアとクラウドソフトウェアという2種類のソフトを構成要素に含んでいる。その設計次第で、同じネットにつながったハードウェアでも全く別物となるわけだ。
筆者の考えるデジタルネイティブIoTとは、クラウドソフトウェアがIoTサービスのほぼ全てを定義しており、それに従ってシンプルなハードウェアが動く構造が実現されている状態を示している。ネットにつながっているが、基本的にあらゆる機能がハードウェア上の構成要素で実現されるような、従来の製品構造とは異なる(筆者はこれを「オンプレIoT」と呼んでいる)。見た目は似ていても、見えない部分が根本から異なり、顧客体験に大きな差が出る。
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