日本企業の海外事業展開を有利にする、デジタルマーケティング3つの活用方法:間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(15)(3/3 ページ)
コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第15回のテーマは「海外での事業展開におけるデジタルマーケティングの活用方法」だ。
海外向けデジタルマーケティングの代表的な手法
次に、海外向けのデジタルマーケティングで使用できる代表的な手法を4つ紹介する。
- Webマーケティング
- SNSマーケティング
- コンテンツマーケティング
- メールマーケティング
(1)Webマーケティング
Webマーケティングとは、自社のWebサイトを活用するマーケティング活動を指す。特にB2B商材において、サプライヤーのWebサイトは購買の意思決定に影響を与える重要な情報源であるため、その重要性は高い。
海外向けのWebマーケティングで知っておくべき点を以下にまとめる。
- 競合相手は国内より海外の方が多く、必然的に難度も高い
- Webサイトで使用する言語は、顧客が検索時に使用する言語と検索キーワードの検索回数を調査し、自社の対応体制の可否を含めて決定する
- Webサイトのドメインやサーバは、Webサイトのターゲット地域、制作の目的(新規顧客開拓など)に合わせて適切な形で選択する
- 日本企業のWebサイトデザインは一般的に説明的な構造であり、海外(特に欧米)はシンプルで直感的である
(2)SNSマーケティング
SNSを活用するマーケティングは、近年、B2B商材の分野でも重要性が高まっている。複数の調査会社の資料によると、海外(特に北米)のB2Bバイヤーが購買プロセスで使用するSNSとして、以下のようなものが挙げられている。
- YouTube
- X(旧Twitter)
特に注目すべきSNSは、ビジネス用途のSNSとして世界で最も認知されているLinkedInだ。最大の特徴は、ほとんどのユーザーがアカウントに会社名(学校名)や役職を登録している点である。
また国や地域によっては、中国のWeChatやWeiboなどのように、独自のSNSが活用されているケースもある。全体の傾向と合わせて、ターゲット地域のユーザーが使用するSNSを事前に調査し、適切な媒体を選定することが、マーケティングの成否を分ける重要なポイントになる。
(3)コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、自社で制作したコンテンツ(メディアを通して伝えられる情報)を活用し、顧客と中長期的な関係性を構築するためのマーケティング手法である。
デジタルマーケティングでは、主に以下のようなコンテンツが活用されている。
- 記事コンテンツ(コラム記事、インタビュー記事、事例紹介記事)
- 動画コンテンツ(製品紹介動画、セミナー動画、会社紹介動画)
- 画像コンテンツ(図解、製品画像)
- ホワイトペーパー(業界関係へのお役立ち情報、調査レポート)
- 販促資料(製品/サービス紹介資料、会社紹介資料)
さまざまな種類のコンテンツの中から、顧客の購買プロセスにおいて情報収集源として活用されているものを中心に制作し、WebサイトやSNSで発信することで、効果を発揮する。
(4)メールマーケティング
自社の見込み客のリストに対してメールを配信し、関係の強化を図る方法がメールマーケティングだ。メール配信の活用は、B2B商材のマーケティングにおいて、以前から変わらず重要な手法である。その主な目的は以下の通り。
- 想起率の向上:継続的にメールを配信することで、顧客が課題に直面した際に、解決策として自社の商材が想起される可能性が高まる
- 商材の理解促進:自社の商材に関するメール(サービス資料など)を配信することで、顧客側が積極的な情報収集をしていない場合でも、商材の理解を促進できる
- 信頼性の向上:過去に実施したインタビュー記事や自社で開催するセミナーの情報を共有することで、専門領域において深い知見を有することが伝わる
まとめ
B2Bの購買プロセスにおいてデジタル媒体の重要性は高まっており、海外での事業展開においても、デジタルマーケティングは欠かせない手法であるといえる。今回紹介した内容が、海外向けデジタルマーケティングの理解を促進し、従来の営業活動に加わる海外事業展開の選択肢の1つとして検討されることを期待する。
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筆者紹介
稲垣達也(いながき たつや)
テクノポート株式会社 海外Webマーケティング サービス責任者
名古屋工業大学大学院(電気機械工学専攻)を卒業後、新卒でテクノポート株式会社に入社。同社にて、国内B2B企業の海外事業展開(海外販路開拓)を支援する「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者として、国内の中小企業から大手企業まで幅広い業種のクライアントを担当。
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