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自動車メーカーらの活用が進むアマダのInnovation LABO、新たなビジネスの芽もFAニュース(2/3 ページ)

アマダはアマダ・グローバルイノベーションセンター(AGIC、神奈川県伊勢原市)を報道陣に公開し、AGICにおける取り組みや最新製品を説明した。

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アーク溶接からレーザー溶接への工法変更の波を捉える

 別の大手メーカーとは、アーク溶接からレーザー溶接への方式変更を進めている。

 現在、多くの現場で使用されているアーク溶接は、溶接装置と金属の間にアークと呼ばれる放電現象を発生させて金属を溶かすが、溶け込みが浅く、熱影響層が広いため、熱ゆがみが大きくなるというデメリットがある。一方、レーザー溶接はレーザー光を収束させ、狭い範囲に高いエネルギーを集めることで、溶け込みを狭く、深くでき、熱影響層が広がりにくい。

 例えばT継手の場合、アーク溶接では両側より溶接を行う必要があるが、レーザー溶接ではレーザー光を斜め方向から当てるキッシング溶接や、レーザー光を板の反対側から当てるステイク溶接なども可能となる。


アーク溶接とファイバー溶接の説明[クリックで拡大]出所:アマダ

 ただ、方式変更はそう容易ではない。溶接を行う図面には溶接強度を担保するために脚長と呼ばれる溶接指示が記載されており、溶け込み深さが浅いアーク溶接では脚長を管理することで強度を担保している。また、アーク溶接が広く普及しているため、溶接を伴う図面のほぼ全てがアーク溶接の脚長を基準として作成されている。

 そのため、アーク溶接からファイバー溶接へ変更しようとしても、図面にはその脚長指示があるため、ファイバー溶接の特徴を生かした方法に変更できない課題があるという。また、「10〜20年」(岸本氏)という歴史の浅いレーザー溶接については、JIS規格がまだ十分に制定されておらず、溶接品質の基礎データの採取とともに、レーザー溶接への設計変更手続きが必要になる。

 そこで図面変更ができる可能性が高い大手メーカーとともに、これらの課題解決に取り組んでいる。アマダ内部でもレーザー溶接を社内規格に盛り込み、レーザー溶接指示の図面への改定を図っている。

「われわれも溶接協会などを通して規格化の働きかけをしている。ただ、設計者はリスクを冒したくないため、規格になってもなかなか使われない可能性もある。Innovation LABOでエビデンスを取り、アマダ社内や大手メーカーとの取り組みを通して、少しずつ変えていきたい」(岸本氏)

 アマダはレーザー、溶接事業の強化に向けて、2024年4月にアマダウエルドテック(旧宮地電子)と合併しており、ブルーレーザーからグリーンレーザー、ダイレクトダイオードレーザー、ファイバーレーザーまで幅広いレーザーの波長、出力のラインアップを備え、微細から大物まで広範なサイズ、形状、材質に対して各種の加工、溶接技術の提案が可能になった。

アマダが持つ幅広いレーザーの波長、出力のラインアップ
アマダが持つ幅広いレーザーの波長、出力のラインアップ[クリックで拡大]
アマダの山梨貴昭氏
アマダの山梨貴昭氏[クリックで拡大]

 アマダ 代表取締役社長の山梨貴昭氏は「ドイツの自動車メーカーが先行していたレーザー溶接に代えてきており、日本も今まさに工法が変わっていく最中にある。そこにレーザー技術を提案できるのは絶好のチャンスだと捉えている。大手メーカーがわれわれの技術を採用してレーザー溶接に置換し、メリットを感じていただければ、そこからはシャワー効果で一気に全国的に広がっていく可能性もある。このInnovation LABOを使って、自動車やバイク、電池メーカーなどの大手メーカーと今まさに取り組んでいる」と語る。

 板金で約2万4000社、微細溶接で約7000社、切削、研削盤で約3万9000社、プレスで約1万社と国内で6万3000社の既納入のユーザーがいるという。「e-Mobility、医療、半導体といった成長産業分野に対し、シームレスな提案で参入する。国内外でグループ一体となった提案を、今まで以上に一層進めていく」(山梨氏)。

 特別イベントではEVモーター用セグメントコンダクタコイル加工機「ES-1A」やワイヤ回転式トーションマシン「LM-26A」、3次元レーザー統合システム「ALCIS-1008e」、電動サーボベンディングマシンと移動可能な協働ロボットを使って曲げを自動化する「EGB-8025e+CR-010B」、協働ロボットにハンディファイバーレーザー溶接機を搭載した「FLW-1500MT+CR-700W」なども披露している。また、6月13日には、日本製鉄 厚板・建材事業部 厚板事業部長の水谷泰氏による特別講演「カーボンニュートラル 鉄と日本製鉄の挑戦」(事前予約制)を予定している。

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