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電子回路の「アイソレーション」を考える今岡通博の俺流!組み込み用語解説(1)(1/2 ページ)

今岡通博氏による、組み込み開発に新しく関わることになった読者に向けた組み込み用語解説の連載コラムがスタート。第1回で取り上げるのは「アイソレーション」だ。

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新連載を始めるに当たって

 今回から新たな連載コラムとして「今岡通博の俺流!組み込み用語解説」を始めることにしました。5月に入ったこの時期、進学や就職で新しい環境に飛び込まれた皆さんが、今までの経験や知識を生かせず、全く門外漢の分野に配属されて悩み深くなったりするころではないかと思います。そこで、電子回路やIoT(モノのインターネット)などの組み込み開発に新しく関わることになった皆さんに向けて、業界用語を理解する一助になればと思いこの連載コラムを新たに企画した次第です。

はじめに

 組み込み技術者にとって「アイソレーション」は最も気を配らなければならない技術課題の一つです。

 本稿の執筆に取り掛かる前にWikipediaでアイソレーションを調べたところ、以下のような項目が出てきました。

アイソレーション(地誌学)

地誌学において、ある山頂のアイソレーションとは、その山頂と同じ高さの地点のうちで山頂からの大円距離が最も小さい地点までの距離のことである。すなわち、山頂からアイソレーションの半径の円内には山頂より高い地点はないということを意味する。

 筆者は電気電子系の用語とばかり思っていましたが、必ずしもそうとはいえないようです。もちろん、これから書く内容は地誌学で用いられるアイソレーションではなく電気電子系用語のアイソレーションですのでご安心ください。

 読者の皆さんはどんな時にアイソレーションを意識するでしょうか。

 そうですねぇ。筆者は、まず高電圧で動作する機器を制御したり、逆に高電圧の信号を取り込んだりするときですかね。また、他の機器が生成したしたRF(高周波)信号をオシロスコープなどで観測する際、グランドが無意識的に共通だったりすると正しい波形が見えなかったりすることがありました。後はどうでしょう。LANなどの通信ケーブルとベースバンドはパルストランスなどで絶縁されていますよね。

 そんなこんなでさまざまなところでアイソレーションは役に立ってるわけですが、本稿ではそれらの用途や目的または方法について、筆者なりの観点でご紹介していければと思います。あくまでも筆者の経験に基づくもので、網羅的かつ教科書的ではないことをご了承ください。ポンコツ技術者の思い出話くらいに聞いていただければと思います。

アイソレーションとは

 まずは.先に示した一般的な解釈であろう地誌学で用いられるアイソレーションと組み込み開発の分野で用いられるそれとを比較あるいは共通点を洗い出すことにより、われわれが取り扱うテーマであるアイソレーションの理解にアプローチしてみたいと思います。

 地誌学で用いられるアイソレーションは距離という「数値」を意味しています。一方、組み込み開発の技術者が用いるアイソレーションは、電気的な絶縁や隔離といった「状態」のことであり、用法が異なります。例えば、組み込み開発の業界で先輩に「測定器とPCとのアイソレーションはどうなってるの?」と聞かれたら、「はい、フォトカプラを挟んでます」と答えるでしょう。

 しかし、地誌学の業界では、例えば山岳パトロールの隊長が部下に「A山頂からとB峰のアイソレーションはどうなってるの?」と聞いたとします。すると部下は「はい、約980mです」などと答えるでしょう。実際のところはよく分かりませんが、Wikipediaの解釈からすると、そのような雰囲気の会話になると想像はできます。

 ChatGPTにも聞いてみましょう。「isolationの言葉の成り立ちは?」と尋ねると、以下のような回答が返ってきました(一部抜粋)。

もともとは物理的な意味で、島や孤立した場所にいることを指していました。後に、この言葉は社会的な意味でも使われるようになり、個人が他の人や社会から切り離されている状態、または孤独感や孤立感を表す言葉として広く用いられるようになりました。

 何だか臨床心理士がよく用いそうな用語ですね。これですと、地誌学的用法と比べて、組み込み開発の業界での用法と共通点を見いだせそうです。

 ということで、日本語の表現では孤立や断絶あるいは孤独を意味するようです。これを電気電子系のコンテキストに当てはめると、絶縁という解釈になるのでしょう。

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