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フローで考える熱のモデリング(その1) 〜熱の理論と熱回路網解析〜1Dモデリングの勘所(31)(3/4 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第31回では「フローで考える熱のモデリング(その1)」と題し、フローで考える熱の理論と熱回路網解析について取り上げる。

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熱伝導の基本問題

 以上の知見を基に、図4上図に示す熱伝導の基本問題を考える。100℃の物体と0℃の物体があり、両者を熱伝導体で接続した後の、熱量の移動、各物体の温度を求める問題である。

熱伝導の基本問題
図4 熱伝導の基本問題[クリックで拡大]

 図4上図図1の考え方にのっとって熱回路網で表現すると図4下図となる。熱伝導体の熱コンダクタンスをG[W/K]、各物体の熱容量をC1、C2[J/K]、温度をT1、T2[℃]、熱量をQ[W]とする。熱量は図の矢印の方向を“正”とする。このとき、以下の式が成立する。

式17
式17

 上記第1式の両辺を時間tで微分し、この式に第2式と第3式を代入すると、

式18
式18

となる。この式を、t=0でT1=T10、T2=T20、Q=G×(T10−T20)≡Q0という条件の下で積分すると、

式19
式19

となる。この式を最初の第2式、第3式に同様の手順で代入すると、

式20
式20

となる。なお、t→∞の場合、

式21
式21

となる。すなわち、十分に時間が経過すると両者の温度は同じになり、その温度は両者の初期温度と熱容量で決まる。

 上記の熱伝導の基本問題をG=10、C1=C2=15として結果を図示すると図5となる。熱容量が物体1と物体2で同じなので、温度は両者の温度の中間値である50℃に収束していることが分かる。一方、熱量は両者の温度差が小さくなるにしたがって減少し、最終的にゼロ(熱平衡)になる。

図4の解析例
図5 図4の解析例[クリックで拡大]

 本問題は式を直接「Modelica」テキスト表現して数値的に解くこともできる。結果は当然図5と同じになる。Modelicaテキスト表現の例を以下に示す(リスト1)。

model twoMasses
  Real T1 (start=100);
  Real T2 (start=0);
  Real Q;
  parameter Real G=10;
  parameter Real C1=15;
  parameter Real C2=15;
equation
  Q=-G*(T2-T1);
  der(T1)=-Q/C1;
  der(T2)=Q/C2;
end twoMasses;
リスト1 Modelicaでテキスト表現した場合

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