デクセリアルズが“進化を実現する”2028中計を策定、2つの成長領域で事業を拡大:製造マネジメントニュース(2/3 ページ)
デクセリアルズは、2019〜2023年度の中期経営計画で課題として残った「事業ポートフォリオの拡大」と「環境変化への対応」を実現する2024〜2028年度の中期経営計画「中期経営計画2028『進化の実現』(2028中計)」を策定した。
2023中計の振り返り
デクセリアルズ 代表取締役社長 新家由久氏は「(2023中計に基づく)中期成長戦略と企業変革の実現で持続的成長と企業価値向上の礎を築けた」と話した後、2023中計を総括しつつ2028中計に言及した。
2023中計では「新規事業領域での事業成長加速」「既存領域における事業の質的転換」「経営基盤の強化」を基本方針に据えた。
「新規事業領域での事業成長加速」ではフォトニクス領域を第3の柱に定めフォトニクス事業子会社のデクセリアルズフォトニクスソリューションズ(DXPS)を2024年4月1日に立ち上げた。「既存領域における事業の質的転換」では高付加価値製品を拡大した他、反射防止フィルムと表面実装型ヒューズの増産投資に踏み切った。「経営基盤の強化」ではエレクトロニクス系の商社であるレスターホールディングスと戦略的パートナーシップを形成した。グローバルでジョブ型人事制度※1も導入し、従業員に対する自社株式の給付も行った。
※1 ジョブ型人事制度:従業員の能力を最大限に生かせるよう、企業が用意した職務内容(ジョブ)に対し、必要とする能力や経験がある人を配置し、役割や仕事内容を決定する人事制度
2028中計では成長領域で事業拡大を基本方針に
これらの施策を実施した2023中計だったが、事業ポートフォリオの拡大と環境変化への対応といった課題が残った。
そこで、2028中計では、「成長領域での事業拡大」「既存領域における事業の質的強化」「経営基盤の進化」を基本方針に据えて、2028年度までに売上高1500億円、事業利益500億円を目指すことにした。
成長領域での事業拡大
「成長領域での事業拡大」では、今後さらに市場の拡大が進む、フォトニクスと自動車の領域で事業の成長を加速する。
フォトニクス事業では、生成AIの活用増加による通信量の増大とデータセンターの増加に伴い、光トランシーバー向け高速フォトダイオード(PD)の需要が拡大し、高速通信技術の次世代化も求められていることを考慮した展開を行う。
具体的には、フォトニクス事業の核となるDXPSを活用して、大手顧客からの高速PDへの需要に対して高速PDの生産能力を拡充して事業成長を目指す。DXPSでは、次世代の光トランシーバー向け高速PDの開発を加速する他、高速通信技術の進化を見越して、同社の技術を掛け合わせて複合半導体デバイスの開発構想に着手する。
自動車事業における車載ディスプレイ向け反射防止フィルム事業では、世界の自動車生産台数が大きく伸びない中、CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)の取り組みが注目されていることを踏まえて展開する。この動きを反射防止フィルムの事業機会と捉え、新しい製造ラインを2024年4月から稼働させ、拡大が続く需要を着実に取り込む。
自動車事業におけるセンサーモジュール向け精密接合用樹脂とACFの事業では、自動車のIoT(モノのインターネット)化が進み、高い精度でデータを取得するために高性能なセンサーデバイスの必要性が高まっていることを考慮して展開する。具体的には、既存のエレクロニクス領域で培った技術やソリューションと、車載向け反射防止フィルムで築いた顧客基盤やパートナーとの協業を通じて、両事業の拡大を図る。
新家氏は「精密接合用樹脂とACFについては、最終製品を手掛ける顧客へのアプローチ『デザイン・イン』と当社の製品を使用する顧客へのアプローチ『スペック・イン』の活動を推進することで、国内においてティア1とティア2の案件で両製品の採用が決まり、既に出荷も開始している」と話す。
これらの取り組みにより2028年度までに、フォトニクス事業の売上高を150億円に、自動車事業の売上高を300億円にすることを目指している。
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