タイミングデバイスはシリコンMEMSが性能優位、SiTimeが生成AI需要の取り込みへ:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
SiTime Japanは、シリコンMEMSベースの高精度タイミングデバイスの優位性を説明するとともに、AIデータセンターなどで用いられるアクセラレータカードやネットワークカードなどに最適なクロックジェネレータ製品ファミリー「Chorus」を発表した。
生成AIがけん引するデータセンター市場でも需要が拡大
生成AIがけん引するデータセンター市場でも、高精度タイミングデバイスの需要が拡大している。データセンターのサーバラック内には、サーバのマザーボードやAIの学習や推論の処理を担うGPUなどを搭載するアクセラレータカードに加え、ラック間をつなぐNIC(ネットワークインタフェースカード)、サーバ間をつなぐToR(Top of Rack)スイッチなどが組み込まれている。それぞれに搭載されるタイミングデバイスの数は、サーバのマザーボードが3〜5個、アクセラレータカードが4〜8個、NICが1〜3個、ToRスイッチが2〜4個となっている。さらに、データセンター間を結ぶための光モジュールや各種スイッチ、ネットワークセキュリティ装置、コアスイッチなどにも多数のタイミングデバイスが用いられる。
SiTimeのChorusは、シリコンMEMSチップとCMOSベースのアナログ回路チップを積層することで複数の高精度タイミングデバイスの機能を1つのパッケージに集積しており、タイミングデバイスの搭載数を減らすとともに、水晶を用いたタイミングデバイスよりも高い精度を実現できる。例えば、AIデータセンター向けのアクセラレータカードで4個のSoCを搭載する場合、それぞれに発振器を組み合わせるために4個の発振器が必要になる。Chorusは、1個のICから4つのSoCそれぞれにクロックを供給することが可能で、さらにこれら4つのクロックを同期させることも可能だ。
また、ルネサス エレクトロニクスやスカイワークス(Skyworks Solutions)などが提供する一般的なクロックジェネレータICは、水晶振動子との組み合わせが前提になっているが、ChorusはシリコンMEMS振動子としてパッケージに内蔵されている。このため、クロックジェネレータICと水晶振動子の間で起こるインピーダンスの不一致や回路基板の設計に起因するノイズカップリングなどの問題が起こらず、設計期間を短縮できるという。
現在、先行顧客にサンプル出荷中のChorusは「SiT91211」と「SiT91213」で、出力周波数範囲が1〜700MHz、プログラマブル出力数が差動×4/LVCMOS×8、周波数安定性が±20ppm/±50ppm、4mm角の24ピンQFNパッケージといった仕様は共通している。唯一位相ジッタ(標準)のみ、SiT91211が150fs、SiT91213が70fsで異なっている。
SiTimeはこれまでもクロックジェネレータ製品を手掛けてきたが、2023年に買収したインドのAura Semiconductorのポートフォリオを統合してラインアップを拡充することにより、今回あらためてChorusとしての発表となった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- CPU・MPUはどうやって動く? 〜 発振器のナゾ
発振器とは、MPUを動作させるための同期信号(クロック)を発生させる回路。具体的にどんな役割を担っているのか解説しよう - 定番タイマーIC「NE555」のはなし
注目デバイスの活用で組み込み開発の幅を広げることが狙いの本連載。第8回は、定番タイマーICである「NE555」について紹介する。 - 「割り込み」を理解してタイマーを使いこなす
ARMマイコン「LPC1114」には周辺機器としてタイマーが搭載されており、“割り込み”の概念を理解することで、複数のプログラムを並行しているかのように処理できます。 - 水晶発振器向けの低ノイズ差動出力を独自開発
セイコーエプソンは、水晶発振器用に独自の差動出力「Wide Amplitude LVDS」を開発した。LSIの振幅レベルに応じた低ノイズの出力をフレキシブルに選択できる。 - 生成AIでデータセンター需要が急伸するマーベル、車載イーサネットにも注力
マーベルジャパンが注力する4つの市場の動向や有力製品を中心とした事業戦略などについて説明。生成AIの登場でデータセンター向けのインターコネクト製品の需要が年率2倍で伸びていることに加え、欧米で本格採用が進む車載イーサネットを日本の自動車メーカーが採用検討していることを明らかにした。 - 「新興国の電子部品メーカーに対抗する」、村田製作所が東光と東京電波を傘下に
村田製作所は、インダクタ部品大手の東光を連結子会社化するとともに、水晶振動子大手の東京電波を完全子会社化すると発表した。「成長著しい新興国の電子部品メーカーに対抗する体制作り」(村田製作所社長の村田恒夫氏)が狙いだ。