お年寄りもはっきり聞こえる“曲面サウンド” 急成長のミライスピーカーの秘密:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(30)(4/5 ページ)
耳の聞こえづらい高齢者でもしっかり聞こえる特殊な「音」を発生する特許技術を持つスピーカーのメーカーがある。「ミライスピーカー・ホーム」を手掛けるサウンドファンだ。同製品はこれまでに累計20万台を売り上げ、大きな注目を集めている。高齢者からの需要も多いが、そもそもどのような「音」を、どのような機構で発生させているのか。サウンドファンの皆さんにお話を伺った。
「高齢者はインターネットで買わない」の前提をうたがう
――テレビの聞こえが悪い方の問題が顕在化しているわけですけど、問題だと思っているのはご本人というより、むしろ耳は悪くない同居のご家族かと思います。実際、購入されるのもご家族からのプレゼントが多いんですか。
高濱氏 いや、実は半々ですね。ご本人も買われます。高齢の方って結構、家族に遠慮されていることが多くて、テレビの音が大きいとか家族に言われて、傷ついているんですよ。ご自身でもなんとかしたいな、って思っている方は多くいらっしゃいます。
――高齢者の方に製品の情報を届けるには、インターネットで宣伝してもあんまり伝わらないのかなとも思うんですけど、そのあたりの工夫とかあったんでしょうか。
高濱氏 高齢の方はECでの購入が難しい、もしかしたら違うんじゃないかと考えました。高齢者の方と一口に言っても、インターネットを日常的に利用している方も増えています。であれば売れるかもしれない、という仮説を立てました。
そこで自社ECとかAmazon、楽天で売り始めました。デジタルマーケティングを一生懸命やって、本当にちょっとずつ積み上げていきました。そして、半年後ぐらいにテレビCMを北海道で地域限定で始めたんです。やっぱりテレビ用のスピーカーなので、お客さまがテレビを見ている時に宣伝するのが1番良いということは分かっていました。代表の山地のこれまでの経験からも、テレビCMの効果をある程度想定できたというのもありました。
テレビCMとD2Cの組み合わせで伸ばしていくと、今度は量販店さんに「ミライスピーカーは売っていませんか」って言ってくださるお客さまが増えたんですよ。それで量販店さんから「ミライスピーカーを取り扱いたいんだけど」ってお問い合わせをいただくようになって。ちょっとずついろんな販路を開拓して、全国の店舗でも購入いただけるようになってきました。
――それでホームの累計販売台数が20万台を突破したと。ホームは4年弱販売されたわけですが、2024年2月には後継モデルのミニが販売されました。これの改良点はどういうところでしょう?
田中氏 まずは安くするための構造を考えたんです。ホームはデザイン優先で作っているので、デザインに合わせて構造をあとから考えた。構造が複雑で、非常にお金がかかっています。そういう反省もあって、ミニはなるべく一体の形状にしているんですね。部品点数を減らして、生産工程の工数も減らして、なるべく安く。
また、ホームはデザイン上、ボリュームつまみの位置が正面から見えづらかったので、今回は正面から見てすぐボリュームつまみが見える形にしています。ただ、基本的な音を出す部分は、振動板の色が違うだけで、中身は全く一緒です。
――振動板の色は、お客さまから要望があったんですか。
田中氏 いや、これはデザイン性を高めるためです。
ここで苦労したのが、単純に黒い材料の振動板にすればいいだろうと変えてみたのですが、全く同じ特性にならなかったことです。素材が違うとどうしても特性も違ってしまって、狙ったものにならない。なのでこれは、同じ材料の白い振動板に、薄く黒いコーティングしているだけのものなんです。
――価格に関しては、やはり約3万円は高いと。
田中氏 3万円も出せば、もうすごい立派なサウンドバーが買えます。Bluetoothスピーカーだと数千円で買えてしまいますし。その点で、3万円ってちょっと微妙な値段でしたね。
高濱氏 プレゼント予算としても、なるべくなら1万円台でっていう声も結構多くいただいておりました。
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